相続した農地をどうする?

農地を所有する身内が亡くなり、相続によって農地を引き継ぐ場合もあります。相続時に必要となる手続きや、農地の活用・処分など、農地を相続したときにやるべきこと、考えたいことをまとめました。
このページの見どころ!!
農地を相続したらやること
期限内の相続登記と届出を忘れずに!

亡くなった身内から農地を相続したら、登記と届出を行うことが法律によって義務付けられています。
登記と届出にはそれぞれ期限が設けられており、正当な理由なく期限を過ぎるとペナルティーの対象となるので注意しましょう。
※ここでは相続した農地の手続きについて解説しています。農地を含む土地や、家などの相続については「不動産相続の基礎知識」を参照してください。
相続登記を行う
農地などの土地を相続した場合、その相続を知った日から3年以内に法務局で相続登記(土地の名義変更)を行います。
相続登記は2024年4月から義務化されましたが、義務化の前に相続した土地についても2027年3月末までに登記する必要があります。
農業委員会に届出をする
農地の相続を知った日から10カ月以内に、農業委員会に農地相続の届出を行います。管轄の農業委員会が分からないときは、役所の農政課に問い合わせましょう。
農地をどうするか考える
耕作できないなら売却・貸し出し・転用も検討

相続した農地を管理せずに放置すると、雑草、病害虫、鳥獣被害を招いたり、不法投棄や火災発生のリスクが高まるなど、周辺農家や地域一帯に迷惑をかけてしまいます。農地の荒廃を防ぐために、草刈りを行うなど適切な管理を心がけましょう。
遠方に住んでいるなどの理由で管理が難しい場合は、地域の農業委員会に問い合わせると、管理や売却、貸し出しなどの相談にのってもらえます。
農業を継続する
農家を継ぐ意思があれば、相続した農地でそのまま耕作ができます。
基本的に土地などの相続財産が基礎控除額を超えると相続税がかかりますが、相続した農地で引き続き農業を行う場合、一定の要件を満たすと相続税の納税が猶予されます。
未経験から農業に参入するなら、市町村やJAの農業研修や農業大学校などでスキルを学ぶとよいでしょう。
農地を売却する・貸し出す
農地の売却・貸し出しを行う場合は、農業委員会の許可(農地法第3条の許可)が必要です。
また、地域の農地バンクに農地を貸し付けると、自分で借り手を探したり、条件などを交渉したりする手間が省けます。
※農地の売却・貸し出しや農地バンクの利用については「農地を売りたい・貸したい・転用したい」で解説しています。
農地を転用する
自分が所有する農地だからといって、勝手に自分の家を建てたり、宅地や駐車場にして売却したりすることはできません。
農地を農地以外(宅地など)の用途に変更することを「農地転用」といい、都道府県知事等の許可(農地法第4条/第5条の許可)が必要です。
※農地転用については「農地を売りたい・貸したい・転用したい」で解説しています。
相続放棄や、農地を国に引き渡す選択肢も
やむを得ず農地を手放したい場合に有効

農地を含む財産の相続を放棄したり、相続した土地を国に引き取ってもらう制度もあります。制度を利用するにはいくつかの条件がありますが、農業を継続する予定がない、または遠方で農地を管理できない場合などは、検討してみましょう。
相続放棄をする
財産の相続を一切拒否することを「相続放棄」といいます。相続財産には現金や土地といったプラスの財産のみならず、借金などのマイナスの財産も含まれるため、相続によって不利益が生じる場合や、借金がなくても相続争いを回避したい場合などに、相続放棄を選択するケースがあります。
相続放棄をするには、相続を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申請をします。一度相続放棄すると撤回はできず、以後は農地を含むすべての財産を受け取れなくなるため、慎重に判断するようにしましょう。
「相続土地国庫帰属制度」で国に引き取ってもらう
「相続土地国庫帰属制度」は、相続などで取得した土地を手放して国庫に帰属させる(国に引き取ってもらう)制度で、2023年に開始されました。
一定の要件を満たした土地が対象となり、法務局による現地調査、承認を得て、引き取ってもらえます。また、承認の際には負担金の納付が必要です。
実際の承認申請や相談については、その土地がある地域の法務局で受け付けていますが、遠方であれば最寄りの法務局で事前相談が可能です。
まとめると…
早めの活用や処分がカギに。相続した農地を荒廃させないよう注意!

農業の担い手が不足している現代は、実家の農地を相続しても農業を継続する予定がなく、遠方住まいで管理もできないなど、相続した農地を持て余すケースが増えています。
耕作や管理を放棄した農地は、あっという間に荒れ地になってしまいます。取り返しのつかない状況になる前に、早めに活用や処分を行い、大切な農地を荒廃させないように注意しましょう。
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最終更新日 2025年6月16日
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