農地法や農地の取り扱いのポイントは?農地を売る・買う・借りる・転用する

農地を売りたい・貸したい・転用したい

2025年6月16日 更新
農地を売りたい・貸したい・転用したい

高齢化や後継者不足などの理由で、所有する農地の売却・貸し出しを検討する農家さんは少なくありません。次の担い手に安心してバトンタッチできるよう、農地のままで売却や賃貸に出す方法のほか、農地以外の用途に転用する方法について解説します。

農地を売る・貸し出す

農地法にもとづく許可を受けて売却や賃貸に出す

農地の売却・貸し出しについては、
①農地のままで売却・貸し出しを行う場合(農地法第3条)
②農地を転用して売却・貸し出しを行う場合(農地法第5条)
という2つのパターンがあります。

①農地のままで売却・貸し出しを行う場合(農地法第3条)

農地のままで売却・貸し出しを行うことから、買い手や借り手は農家(個人農家や農業法人)に限定されます。具体的には、近隣の農家や知り合いの伝手で買い手や借り手を探したり、日頃から付き合いのある農業関連団体から紹介してもらったりするケースが多いでしょう。

農地のままで売却・貸し出しを行う場合の流れ

1. 買い手や借り手を探す
2. 条件付契約(売買契約・賃貸借契約)を締結する
3. 農業委員会に相談し、許可申請をする
4. 農業委員会から許可証が交付される
5. 農地を引き渡す

農地のままで売却・貸し出しを行う場合は、農業委員会の許可(農地法第3条の許可)が必要です。

実際の売買や貸し借りでは、許可申請の前に売買契約や賃貸借契約をするケースが多いのですが、この段階では許可が下りるかどうか分からないため、「不許可の場合は契約解除となる」という条件付で契約を結ぶのが一般的です。
農業委員会による審査を経て許可証が交付されると、正式に契約成立となり、農地の引き渡しを行います。

②農地を転用して売却・貸し出しを行う場合(農地法第5条)

農地を宅地や駐車場などに変更することを「農地転用」といいます。
農地を転用することで、農家以外に土地を売ったり貸したりできるようになるため、幅広い対象の中から買い手や借り手を探せるようになります。
農地転用の手順などは、後述の「農地を転用する」で解説しています。

農地バンク経由で貸し出しをする

借り手探しや条件交渉などのサポートが受けられる

農地の貸し借りは、農林水産省が管轄する「農地バンク(農地中間管理機構)」を通して行うこともできます。

農地バンクは、「農地を貸したい人」と「借りたい人」の貸借を仲介する仕組みで、各都道府県に設置されています。貸したい農地を農地バンクに登録すると借り手を探してもらえて、条件の調整や契約の際も農地バンクが間に入ってサポートしてもらえるメリットがあります。 また、農地の貸付は原則10年以上となっており、貸付期間中は農地バンクから所有者へ賃料が支払われるため、賃料未払いの心配がありません。貸付期間が終了した農地は所有者に返却されます。

農地バンクに登録するには農業委員会による審査が必要です。まずは地域の農業委員会に相談しましょう。

農地を転用する

農地以外の用途で使用する場合に必要な手続き

農地に家を建てたり、駐車場や資材置場などにしたりする場合は、「農地転用」をして土地の用途を変更します。

農地転用については
①所有する農地を別の用途で使うために転用する場合(農地法第4条)
②農地の売却や貸し出しのために転用する場合(農地法第5条)
という2つのパターンがあり、根拠となる法律の条文がそれぞれ異なります。

農地転用が許可される条件とは

農地転用をするには、都道府県知事等の許可(農地法第4条/第5条の許可)が必要です。このときの要件として、「立地基準」と「一般基準」と呼ばれる2つの基準があり、両方をクリアすると許可証が交付されます。

農地転用の「立地基準」

農地は、その農業生産力などから全部で5つの区分に分けられており、区分ごとに決められた「立地基準」によって、転用許可の可否が判断されます。

5つの区分のうち、「農用地区域内農地」「甲種農地」「第1種農地」に指定されている農地は、いずれも農業利用の優先度が高い立地であることから、原則として転用ができません。

生産性 農地区分 概要 農地転用許可(立地基準)
農用地
区域内
農地
都道府県知事が指定した「農業振興地域」内、市町村が農業専用地域として定めた区域にある。生産性の高い優良農地。 原則不許可
甲種農地 公共投資がされて8年以内の農地。高性能な農業機械を使った農作業ができる。
第1種
農地
10ヘクタール以上の集団農地。公共投資がされており、生産力が高い。
第2種
農地
市街地の近くにある小集団の生産力の低い農地。公共投資はされていない。 第3種農地に立地困難な場合は許可
第3種
農地
市街地の中にある農地。周囲が宅地になっていることが多い。 原則許可。市街化区域内なら転用許可は不要。届出のみで転用できる。

市街化が進んでいる「第3種農地」であれば、転用は原則許可されます。所有する農地の区分が分からない場合は、地域の農業委員会に問い合わせてみましょう。

農地転用の「一般基準」

立地による許可基準に加えて、転用の確実性や、周辺環境への影響などをチェックするのが「一般基準」で、次のような条件が設けられています。

・転用の確実性があるかどうか
…十分な資力や信用があり、関係権利者の同意が得られていること。

・周辺農地への被害防除は適切か
…周辺農地の耕作や、農業用用排水施設の機能に支障が出ないような措置があること。

・一時転用の場合、原状回復が可能かどうか
…農地を一定期間だけ、資材置場や建設残土の埋め立てなどのために転用する場合、目的完了後に元通りの農地に戻すこと。

市街化区域内の場合は届出だけでOK

農地転用には許可が必要ですが、中には例外もあります。
都市計画法が定めた都市計画区域の「市街化区域」は、住宅や商業施設などが集まる市街地として整備されている地域です。この市街化地域内にある農地の場合は、転用に許可が要らず、届出のみでよいとされています。

所有する農地が市街化区域かどうかは、役所の都市計画課などで確認することができます。

市街化区域外の場合は転用の許可を受ける

転用する農地が「市街化調整区域」や「線引きされていない地域」にある(=市街化区域ではない)場合は、都道府県知事等の許可が必要です。

農地を転用する流れ(農地法第5条)

1. 買い手や借り手を探す
2. 条件付きで契約(売買契約・賃貸借契約)を締結する
3. 農業委員会に相談し、農地転用許可申請をする
4. 農業委員会を経由して、都道府県知事等から許可証が交付される
5. 農地を引き渡す

農地の売却や貸し出しにともなう転用(農地法第5条)については、農地転用の許可申請の前に売買契約や賃貸借契約をするケースが多いのですが、この段階では許可が下りるかどうか分からないため、「不許可の場合は契約解除となる」という条件付で契約を結ぶのが一般的です。

また、農地の売却や貸し出しをせず、所有する農地を別の自分で使うための転用(農地法第4条)については、上記3~4の手順で進めていきます。農地の転用が許可されたら地盤改良や造成工事に着手し、工事完了後には法務局で地目変更の手続きを行いましょう。

まとめると…まとめると…

スムーズな手続きのために、事前の相談やサポートを活用する

スムーズな手続きのために、事前の相談やサポートを活用する

農地の売却・貸し出し・転用は、農地法によって厳しい制限がかかっています。農家にしか売却や貸し出しができず、転用する場合も立地などの規制がありますが、事前に農業委員会で相談したり、許可手続きのサポートを受けたりすることで、スムーズに手続きを進められるでしょう。

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最終更新日 2025年6月16日