農地法や農地の取り扱いのポイントは?農地を売る・買う・借りる・転用する

「農地」と「農地法」を知る

2025年6月16日 更新
「農地」と「農地法」を知る

農地は、宅地などの一般的な土地と違って、売買・貸し借りなどを行う際に農地法という法律の規制を受けます。そもそも農地とはどんな土地か、どのように農地法とかかわっているのかなど、農地と農地法の基本的な知識を押さえましょう。

「農地」とは、どんな土地?

田んぼや畑など、耕作するための土地が農地とされる

農地は、農地法の第2条で「耕作の目的に供される土地」と定義されています。
具体的には、穀物や野菜、果樹などを栽培している田んぼや畑のことで、実際に今、作物をつくっている土地はもちろん、今は耕作していなくても、耕作しようと思えばいつでも耕作できるような休耕地も農地に含まれます。

土地の主な用途を示す登記簿の地目は「田」「畑」となっていることが多いですが、農地かどうかの判断は土地の現況によって判断されます。たとえ地目が「宅地」などであっても、その土地が耕作に供される土地であれば、農地とみなされます。

農地は自由に売買や転用ができない

食料確保のインフラとして、法律の制限がかかる

所有している農地を「売りたい」、もしくは事業拡大や新規就農のために農地を「買いたい」と思っても、農地を好き勝手に売ったり買ったりすることはできません。

農地は国内の農業生産の基盤であり、食料の安定供給にかかわることから、農地法という法律によって保護されています。そのため、農地を取得できるのは農家だけと決まっており、農地の売買や貸し借りを行う場合や、農地に家を建てるために転用を行う場合は、農地法の許可が必要です。

農地法とは?

農地の売買・貸し借り・転用のポイントを紹介

国内の食料安定供給を確保するために、農地の取り扱いを定めた法律が「農地法」です。その第3条・第4条・第5条では、農地の売買・貸し借り・転用などにまつわる制限が記載されています。

農地法第3条【農地の権利移動の制限】

第3条(抜粋)
"農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。"

第3条は、「農地を農地のままで売買、貸し借りを行う」場合の制限についてです。
農地のままで売買や貸し借りを行うには、その農地の所有権を移転したり、賃借権などを設定したりすることになります。これらの権利移動の際には、農業委員会の許可を受ける必要があるという内容です。

農業委員会の許可を受けるにはいくつかの要件があり、これまでは一定規模以上の農家しか権利取得が認められないなど、売買や貸し借りのハードルの高さが問題となっていました。
けれども、2023年に農地法第3条の一部が改正され(※)、農地の権利取得にかかわる下限面積の要件が廃止されました。これによって、面積が比較的狭い農地でも売りやすく、また農業の新規参入者でも農地を買いやすくなるなど、農地売買のハードルが下がっています。

※現行の許可要件については、「農地を買いたい・借りたい」で解説しています。

農地法第4条【農地の転用の制限】

第4条(抜粋)
"農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(中略)の許可を受けなければならない。"

第4条は、「農地の用途を変更する」場合の制限についてです。
農地は「耕作の目的に供される土地」ですから、耕作以外の目的、つまり家を建てたり、駐車場や資材置場などにしたりすることはできません。
そこで、所有する農地を住宅地や駐車場などにしようと思ったら、「農地転用」といって、土地の用途を変更する(=転用する)ことになります。
この農地転用に際し、農業委員会に申請を行い、都道府県知事等の許可を受ける必要があるというのが農地法第4条の内容です。

農地法第5条【農地の権利移動と転用の制限】

第5条(抜粋)
"農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(中略)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。"

第5条は、「農地を転用するために売却や貸し出しを行う」場合の制限についてです。
農地の売却や貸し出しといった権利移動を行った後で、転用して家を建てたり、駐車場や資材置場などにしたりすることもあります。
このケースに当てはまるのが農地法第5条で、農地の権利移動と転用のために農業委員会に申請を行い、都道府県知事等の許可を受ける必要があるという内容です。

農業委員会とは?

農業に関する相談や、許可手続きのサポートを行う組織

農業委員会は、農地利用の最適化の推進や、農地法にもとづく農地の権利移動の許可、農地転用案件への意見具申など、農地に関する事務を担う行政委員会です。
原則として市町村ごとに設置され、地元の農業に関する相談に応じたり、農地法の許可手続きのサポートを行ったりしています。管轄の農業委員会を知りたいときは、役所の農政課に問い合わせると教えてもらえます。

まとめると…まとめると…

農地の許可手続きを進めるなら、農地法のポイントを押さえておく

農地の許可手続きを進めるなら、農地法のポイントを押さえておく

農地法は、農地の売買・貸し借り・転用などにともなう許可手続きに大きくかかわってくる法律です。特に第3条・第4条・第5条は、該当する権利の許可申請の際に役立つ内容ですので、チェックしておくとよいでしょう。
次のページからは、実際に農地を売買・貸し借り・転用したいときのポイントや流れを見ていきます。

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最終更新日 2025年6月16日