農地を買いたい・借りたい

農業を始めるにあたって、農地を買ったり借りたりしたいときには、どのような手続きをすればよいのでしょうか。ここでは、農業の新規参入者が農地を利用するために必要な手続きや準備について解説します。
まずは農業のスキルを学ぶ
知識や技術を身に着けてから農地の権利を取得

農地の耕作や管理を行うには専門的な知識やノウハウが欠かせないため、未経験者が「とりあえず農地を買ってみよう」と思っても、購入することはできません。
農地の権利を取得するには要件があって、個人の場合は一定の技術や営農計画などがある場合に限り、農地法の許可を受けて農地の購入や賃借ができる仕組みになっています。
農業に新規参入し、個人で経営したいなら、まずは市町村やJAが行っている農業研修、農業大学校などで農業に関する知識や技術を習得しましょう。また、農業法人に就職して、働きながら学ぶ方法もあります。
実際に農地を買ったり借りたりする際には、研修先や知り合いの農家の伝手で農地を紹介してもらうケースが多いので、自分が農業を始めたいと思う地域や、作りたい作物の産地で学びながら人脈を築いていくのがおすすめです。
ちょこっとメモ!
農作業を趣味にするなら家庭菜園や貸し農園を検討する

本格的な農業ではなく、趣味として野菜や花を育てるなら、家庭菜園という選択肢があります。家庭菜園は自宅の庭など宅地の一部を畑や菜園にするため、農地法で保護された農地には該当しません。
自宅に畑や菜園をつくるスペースがない場合は、市町村が開設する貸し農園(市民農園)を借りて栽培をすることもできます。自分が耕作・管理しやすい規模や場所を選んで農作業を楽しみましょう。
農地を買う・借りる
許可を受けるには3つの要件を満たす必要がある

「『農地』と『農地法』を知る」で解説したように、2023年の農地法第3条の一部改正によって農地取得の下限面積要件が廃止され、現在は農業の新規参入者であっても農地を買ったり借りたりしやすくなりました。
とはいえ、誰でも自由に購入や賃借ができる訳ではなく、主に次の3つの要件を満たすことで、農地の権利取得が許可されます。
権利取得の3つの要件
1. 農地のすべてを効率的に利用する
…取得した農地を放置せず、必要な機械や労働力を適切に利用して耕作する営農計画があること。
2. 必要な農作業に常時従事する
…農地を取得した人が、必要な農作業に常時従事(目安は年間150日以上)すること。
3. 周辺の農地利用に支障がない
…周辺の農地に迷惑をかけるような行為(地域の農業用水の水利調整に参加しない、有機農業が行われている地域で化学肥料や農薬を使用するなど)を行わないこと。
農地を購入・賃借する場合の流れ
1. 農地の紹介を受ける
2. 条件付契約(売買契約・賃貸借契約)を締結する
3. 農業委員会に許可申請をする
4. 農業委員会から許可証が交付される
5. 農地の引き渡しを受ける
農地を買ったり借りたりする場合は、農業委員会の許可(農地法第3条の許可)が必要です。
実際の売買や貸し借りでは、許可申請の前に売買契約や賃貸借契約をするケースが多いのですが、この段階では許可が下りるかどうか分からないため、「不許可の場合は契約解除となる」という条件付で契約を結ぶのが一般的です。
農業委員会による審査を経て許可証が交付されると、正式に契約成立となり、農地が引き渡されます。
農地バンク経由で借りることも可能
農地の紹介やアドバイスが受けられるので便利

農地の貸し借りは、農林水産省が管轄する「農地バンク(農地中間管理機構)」を通して行うこともできます。
農地バンクは、「農地を貸したい人」と「借りたい人」の貸借を仲介する仕組みで、各都道府県に設置されています。利用申込みをすると、希望に沿った農地の紹介やアドバイスが受けられて、条件の調整や契約の際も農地バンクが間に入ってサポートしてもらえます。

農地バンクの問合せや利用申込みは、地域の農業委員会や役場の農業担当課、農地バンクの窓口で行っています。地域ごとに利用条件などが異なるため、事前に相談するようにしましょう。
空き家バンクで農地付き空き家を探す
農地付き空き家なら住居と農地がセットで手に入る

「自然の多い田舎や地方に移住して、農業を始めたい」という人は、「農地付き空き家」にも注目してください。
農地付き空き家は、その名のとおり、農地がセットになった空き家のこと。地方に移住して農業を始める場合は、通常なら住居と農地をそれぞれ探さなくてはなりませんが、農地付き空き家を買ったり借りたりすることで、住居と農地を同時に確保できるメリットがあります。
農地付き空き家は、国や市町村が物件情報を管理する「空き家バンク」サイトや、市町村のサイトで確認できます。移住支援や就農支援に力を入れている市町村では、相談窓口を設けて移住・新規就農希望者のサポートを行っているところもあります。
まとめると…
農地取得のサポートを活用!地域のルールについても事前に確認を

農業の新規参入者に対する国や自治体の支援は手厚く、最近では就農や農地取得をサポートする仕組みや相談窓口を設ける地域も増えています。
農業を始めたい地域が決まっているなら、地域の農業に詳しい農業委員会に問い合わせてみましょう。農地取得のルールは地域差があるため、その地域の実情に応じたアドバイスが受けられます。
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最終更新日 2025年6月16日
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