早めの対策で負担と悩みを軽減!将来に備えてそろそろ知りたい介護の制度・お金・やるべきこと

気になる介護のお金の話

2021年10月6日 更新
気になる介護のお金の話

介護保険サービス料金の利用者負担は原則1割で、残りの9割が介護保険から支払われます。介護をする上で避けて通れない「お金」ですが、介護保険や自治体による支援・助成制度をうまく活用して、不安を解消していきましょう。

介護保険サービス料金のしくみ

所得や住所、要介護度などで負担額が変わる

所得や住所、要介護度などで負担額が変わる

介護保険サービスを受けると、利用者は原則として1割の自己負担額を支払います。ただし一定以上の所得がある人は、2割もしくは3割の負担となります。自分の自己負担が何割かは、要介護認定を受けた全員に発行される「介護保険負担割合証」で確認できます。

所得と自己負担額
※世帯に65歳以上の方が1人の場合(単身者含む)

年金収入等が280万円未満の人
→ 1割負担
年金収入等が280万円以上の人
→ 2割負担
年金収入等が340万円以上の人
→ 3割負担

・利用料は「単位」をチェック

介護保険の居宅サービスの利用料は、「1回○単位」というように「単位数」によって表しています。例えば、ホームヘルパーによる「訪問介護」サービスで、食事や入浴の介助といった「身体介助(30分以上1時間未満)」を受けたときの利用料は396単位。1単位あたりの単価は基本10円なので、3,960円(1割負担なら396円)です。
ただし、利用料の単価は地域ごとに8つの区分があり、1単位あたり10.00円~11.40円の範囲に設定されています。東京都を例に挙げると、23区は11.40円ですが、八王子市や武蔵野市などは11.05円というように人件費の地域差を反映しています。

・要介護度で変わる上限額

介護保険サービスでは、要介護度によって支給限度額が決められています。要介護度が高いほど支給限度額が多くなり、利用できるサービスも増えます。支給限度額の範囲でサービスを利用する場合は所得に応じて1~3割を負担し、上限を超えた分については利用者が全額負担します。

要介護度別の支給限度額(居宅サービス)

要介護度 1カ月あたりの支給限度額
(1単位=10円で算出)
自己負担額
(1割~3割)
要支援1 5万320円(5,032単位) 5032~1万5096円
要支援2 10万5310円(10,531単位) 1万531円~3万1593円
要介護1 16万7650円(16,765単位) 1万6765円~5万295円
要介護2 19万7050円(19,705単位) 1万9705円~5万9115円
要介護3 27万480円(27,048単位) 2万7048円~8万1144円
要介護4 30万9380円(30,938単位) 3万938円~9万2814円
要介護5 36万2170円(36,217単位) 3万6217円~10万8651円

・高額介護サービス費とは

介護保険サービスの利用者が1カ月に支払う自己負担額には上限があり、限度額を超えると、超えた分が「高額介護サービス費」として介護保険から払い戻されます。負担限度額は原則として月額4万4400円ですが、年収770万円以上の人がいる世帯では9万3000円、年収1160万円以上の人がいる世帯では14万100円の負担限度額となります。

月々の介護費用の平均は7.8万円

在宅or施設、要介護度別の費用の違いにも着目!

在宅or施設、要介護度別の費用の違いにも着目!

介護保険サービスの自己負担分は上記のとおりですが、実際の介護では介護保険が使えないサービス(介護タクシーの運賃、通所介護の食費など)や医療費などもあり、すべてを含む費用はどれくらいかかるのか、気になるところです。
介護にかかる費用の目安を知る手がかりとして、2018年に(公財)生命保険文化センターが調べたデータ(※)があります。それによると、介護保険サービスの自己負担額を含む月々の介護費用は平均7万8000円。費用の分布をみると、「15万円以上」(15.8%)がトップで、以下「5万~7万5000円未満」(15.2%)、「1万~2万5000円未満」(15.1%)となっています。

月額の介護費用

支払った費用はない 3.6%
1万円未満 5.2%
1万~2万5千円未満 15.1%
2万5千~5万円未満 11%
5万~7万5千円未満 15.2%
7万5千~10万円未満 4.8%
10万~12万5千円未満 11.9%
12万5千~15万円未満 3%
15万円以上 15.8%
不明 14.2%

・在宅or施設の介護費用は?

介護を行う場所が在宅か、あるいは施設かで介護費用も変わってきます。在宅の場合は月々の平均4万6000円、施設の場合は平均11万8000円です。

月額の介護費用(介護を行った場所別)

在宅 施設
支払った費用はない 4.4% 2.7%
1万円未満 8.6% 1%
1万~2万5千円未満 23.5% 4.8%
2万5千~5万円未満 15.9% 4.5%
5万~7万5千円未満 15.7% 14.7%
7万5千~10万円未満 1.8% 8.6%
10万~12万5千円未満 8.1% 16.1%
12万5千~15万円未満 0.5% 6.5%
15万円以上 5.2% 30.1%
不明 16.2% 11%
平均 4.6万円 11.8万円

・要介護度別の介護費用は?

最後に認定された要介護度別の介護費用を見ると、概ね要介護度が上がるにつれて月々の介護費用も上がる傾向が見られました。

月額の介護費用(要介護度別)

要支援1 5.8万円
要支援2 5.4万円
要介護1 4.3万円
要介護2 5.7万円
要介護3 8.7万円
要介護4 9.9万円
要介護5 10.4万円
介護保険を利用せず 4.4万円
※(公財)生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2018年度)より作成
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/30/2018honshi_all.pdf

介護保険で20万までリフォームできる

手すりの取り付けなどが1割負担で可能!

手すりの取り付けなどが1割負担で可能!

在宅で介護をする場合、介護を受ける本人が暮らしやすく、介護をする側も介護しやすいようにリフォームを検討する方も多いのではないでしょうか。介護保険には、手すりの取り付けや段差の解消などのリフォームについて、その費用の一部が支給される「住宅改修」サービスがあります。
支給額は1つの住宅で1人あたり20万円までとなり、原則1割(所得によっては2割もしくは3割)を自己負担します。20万円までなら、1度に利用しても、複数回に分けて使っても構いません。注意したいのは、介護保険サービスで改修を行うには、事前に自治体へ申請しなければならないこと。ほかにも細かい条件があるため、まずはケアマネジャーに相談しましょう。

【介護保険で行える住宅改修】
・廊下などに手すりを取り付ける
・危険な段差を解消する
・扉を開閉しやすい引き戸や折れ戸などに取り換える
・すべりにくく、移動しやすい床材や通路面の材料に変更する
・和式便器を洋式便器に取り換えるなど、利用しやすくする
・上記の改修をする上で必要となる付帯工事

ちょこっとメモ!ちょこっとメモ!

自治体によるリフォーム助成も。介護保険サービスと併用で費用負担を軽減!

自治体によるリフォーム助成も。介護保険サービスと併用で費用負担を軽減!

自治体によっては、介護のためのリフォームついて独自に助成制度を設けていることもあります。介護保険サービスと併せて利用できれば、リフォーム費用の負担がさらに軽減されるため、自治体の役場の窓口やケアマネジャーに尋ねてみましょう。

福祉用具のレンタル・購入も介護保険で

介護に必要な種目を1割負担で利用できる

介護に必要な種目を1割負担で利用できる

車イスや介護用の電動ベッドなどは購入すると割高ですが、介護保険の「福祉用具貸与」サービスを使うと原則1割(所得によっては2割もしくは3割)の自己負担でレンタルできます。また、衛生上の理由でレンタルしづらい腰掛便座や入浴補助用具などを介護保険で購入できる「特定福祉用具販売」サービスもあり、こちらも原則1割(所得によっては2割もしくは3割)の自己負担となります。

まとめると…まとめると…

お金の不安を取り除くには…介護保険や軽減税率を活用する!

お金の不安を取り除くには…介護保険や軽減税率を活用する!

「100人いれば100通りの介護がある」といわれるように、介護費用といっても在宅or施設、要介護度などによって必要な金額はまちまちです。とはいえ、介護が始まってから慌てることのないように、介護保険のしくみや軽減措置などについて知っておくことは大切。早めの情報収集が、お金の不安の解消に役立ちます。