【専門家監修】区分マンション投資が儲からない理由とは?

2021年10月30日

不動産投資を検討しているサラリーマンの人にとって、マンション一棟まるごとではなく部屋ごとに購入する「区分マンション投資」は、少額で始められる魅力的な不動産投資と言えます。しかし、実際に取り組んでみて「儲からない」と撤退した人も少なくありません。今回は、区分マンション投資のメリットやデメリットを踏まえたうえで、儲からない理由や失敗しない方法について解説します。

区分マンション投資とは

投資目的でマンションを購入する場合には「区分マンション投資」と「一棟マンション投資」の2つがあります。区分マンション投資とは、マンションを「一室単位」で所有し、他人に貸すことで賃貸料を得る不動産投資の方法です。一方、一棟マンション投資とは、その名のとおり「一棟まるごと」購入するパターンです。マンションを丸ごと一棟購入するとなると、億単位の金額が必要になることがほとんどのため、年収が400~500万円ほどの一般的なサラリーマンにとっては非現実的かもしれません。

しかし、一室単位で購入する区分マンション投資であれば、安いものだと数百万円で購入が可能です。もちろん、価格帯については新築や中古、立地や間取りなどによっても大きく左右されますが、不動産投資のなかでは比較的資金が少なめでも始めることができます。

ちなみに、区分マンション投資では、賃貸管理や物件管理については基本的に管理会社に一任となります。たとえば、空室を埋めるために賃貸人を募集したりといった業務のほとんどを行ってくれるということです。このため、区分マンション投資はサラリーマンのように管理に時間がとれない人にピッタリの投資方法として注目されています。

区分マンション投資のメリット

区分マンション投資には、主に6つのメリットがあります。1つ目は、区分マンション投資は一部屋単位で所有するため、少ない自己資金で好条件の物件を手に入れやすい点です。いくら利回りのいい好条件のマンションとはいえ、一棟まるごと購入するのはサラリーマンにとってハードルが高すぎるかもしれません。しかし、区分マンション投資であれば、立地条件や築年数など、多くの選択肢のなかから少額で良い条件のマンションを手に入れることができるのです。

2つ目は、マンションの管理については管理会社に一任できるため、手間がかからず時間を有効活用できることです。これは本業を並行して行わなければならないサラリーマンの人にとっては大きなメリットです。3つ目は年金対策です。区分マンションの所有によって毎月安定した家賃収入を得ることができれば、年金としての価値が生まれます。将来の年金制度に不安を抱えている人にとっては、少額で始められる区分マンション投資は魅力的です。

4つ目は投資リスクを抑えられる点です。投資全般には必ずリスクがつきまといます。マンション投資ももちろん例外ではありません。しかし、区分マンションを複数にわたって所有することで分散投資が可能になり、投資リスクを抑えることができます。たとえば、一部屋だと空室になったときに家賃がゼロになってしまいますが、複数所有しておけばリスクの分散が可能です。

5つ目は保険としての価値です。マンションをローンで購入する際には、団信(団体信用生命保険)」に加入しなければならないケースがほとんどです。団信に加入することで、債務者(ローンを組んだ人)が死亡したり重度の障害を負ったりした場合に、ローンの残りが免除されます。つまり、自分の身に何か起こったとしても、残された家族には「ローン完済済みの区分マンション」が相続されるという、まるで生命保険のような役割を持つということです。

6つ目は出口戦略に関するメリットです。区分マンションは、金額面での購入ハードルが低いため、比較的売却しやすいというメリットがあります。もし、購入した区分マンションが思ったような収益を上げることができなかった場合でも、スピーディに損切りし撤退することが可能です。

区分マンション投資のデメリット

区分マンション投資の1つ目のデメリットは、一棟マンション投資に比べて平均利回りが低くなりがちなことです。地方や築古の区分マンションでは利回りが10%を超えるようなケースもありますが、リスクの低い区分マンション投資は基本的にリターンが小さいのです。また、万が一空室になった場合には家賃収入がゼロになってしまいます。一棟マンション投資では全部屋が空室になることはほぼありませんが、区分マンション投資では部屋数が少ないためリスクが大きくなります。とくに、一部屋だけの所有だと、入居率が100%か0%のどちらかになるため、空室発生時のリスクがより高いと言えるでしょう。

2つ目のデメリットは、少額の資金で始められる反面、利益率が低いことです。たとえ家賃収入が発生していたとしても、管理費や修繕積立金、固定資産税などの経費がかさむと赤字になるおそれもあります。

3つ目は、区分所有では管理や運営が制限されるため、修繕やリフォームを自由に行えないことです。たとえば「入居率が悪いのはセキュリティシステムが完備されていないからだ」と気がついたとしても、勝手に共用部にセキュリティシステムを設置することはできません。このような変更や修繕などを行うためには、ほかの所有者から承認を得る必要があります。また、いくら所有している区分内だとしても、管理規約に逆らって「ペット飼育可」にすることもできません。

4つ目は、部屋の評価によっては融資が下りないリスクがあることです。融資を受ける際には、融資の是非を判断するために、個人の信用以外にも「どれくらい担保としての価値があるか」という物件の費用性を評価するケースがあります。これを「積算評価(担保評価)」と呼びます。一棟の場合は「土地プラス建物」で評価されますが、区分マンションの場合、土地の購入がないため部屋の価値だけで融資の判断が下されるのです。このように、積算評価が重視されるケースでは融資が下りない可能性があるため、デメリットのひとつと言えるでしょう。

区分マンション投資はなぜ儲からない?

区分マンション投資にはメリットもデメリットも存在するのですが、やりようによっては儲かる可能性はあります。それにもかかわらず「区分マンション投資は儲からない」と撤退してしまう人が多いのはなぜでしょうか。

理由の第一として、物件選びでつまずいている可能性が高いです。いくら区分マンション投資が始めやすいとはいえ、知識も何もないまま手を出してしまっては、リスクがあまりにも高すぎます。「高収益になる家賃設定が可能か」「空き室リスクはないか」「諸経費を差し引いても十分な利益が上げられるのか」など、収益を生むための条件を満たす物件を探すのはとても難しいのです。なお、ネットで見つかる物件には、基本的にこれらの条件を満たすものはほとんどないといって差し支えはないでしょう。

そして、シミュレーション不足も挙げられます。家賃収入のみを見た「表面利回り」だけでなく、管理費などさまざまな経費を差し引いた「実質利回り」がしっかりと確保されていなければいけません。ちなみに、実質利回りのことを考えると表面利回りは最低10%以上は確保しておきたいところです。空室や修繕費の発生で簡単にキャッシュフローがマイナスになってしまうということは押さえておきましょう。また、ローンの金利が上がった際にも利益確保ができるのかなど、事前のシミュレーションがしっかりできていないと、思わぬ損失が出たときに対応できなくなるので要注意です。

区分マンション投資で失敗しない方法は?

区分マンション投資で成功するためには「これ以上ない」と思える優良物件を所有する以外に方法はありません。先述の通り、ネットで紹介されている範囲で見つけるのはかなり困難なため、不動産投資家や知人を通じて情報を得ることをおすすめします。ポイントは、毎月の家賃収入を安定させるために、空室のリスクが極端に低い物件を探すことです。たとえば、大学の近くにある物件であれば、毎年学生の入居が見込めるでしょう。

注意点は、不動産会社のセールストークを安易に信じず、自分で納得がいくまで検討することです。そのためには、不動産投資に関する知識が必要不可欠です。少なくとも、不動産投資関連の本を何冊か読むくらいの事前準備は必要だと考えておきましょう。

区分マンション投資は慎重に検討しよう!

区分マンション投資は少額の自己資金で始められる反面、利益もそれほど大きくなく、メリットがデメリットを上回るケースが多々あります。特に、不動産投資の知識が少ない段階では、多少良さそうな物件だからと安易に飛びつかないほうがいいでしょう。なお、不動産投資はいくつか方法があるので、区分マンション投資については慎重に検討しつつ、さまざまな投資のやり方を勉強して利益を出せる不動産投資家を目指しましょう。

執筆者プロフィール

髙野 友樹
髙野 友樹様

公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。
不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。
現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。


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