“程よい距離感”で親世帯も子世帯も安心して暮らせる 後悔しない! 二世帯住宅を建てるポイント

“程よい距離感”を保つ間取りとは

2024年8月19日 更新
 “程よい距離感”を保つ間取りとは

親世帯と子世帯が同じ家に住む安心感を得ながら、別居のようなプライバシーも大切にしたい。そんな願いを叶える二世帯住宅は、間取りの工夫でお互いの生活空間に“程よい距離感”をつくることがポイントです。

二世帯住宅のタイプは全部で3種類

共有するスペースと分離するスペースで間取りタイプが変わる

共有するスペースと分離するスペースで間取りタイプが変わる

二世帯住宅の間取りは、親世帯と子世帯で利用する共有スペースと、世帯別に利用する分離スペースの範囲によって、独立・共有・部分共有の3つのタイプに分けることができます。
それぞれのタイプにメリット・デメリットがあり、お互いの距離感も変わってくるので、生活スタイルに合ったタイプを選ぶようにしましょう。

独立タイプ

それぞれの世帯の独立性を高めた間取り

それぞれの世帯の独立性を高めた間取り

「独立タイプ」は、玄関やリビング、キッチン・ダイニング、水まわりといった生活空間のすべてを完全に分離させて、プライバシーを確保した間取りです。

親世帯と子世帯の暮らしが独立しているので、お互いに気をつかうこともなく、自分の世帯のペースで生活することができます。ふだんは別々に暮らしつつ、必要なときは協力し合いたいという場合に向いています。

  • プライバシー性…◎
  • 行き来のしやすさ…△
  • コスト面…△

独立タイプのメリット

・生活空間が別々なのでプライバシーが確保されている
・お互いの生活スタイルを尊重できる
・将来、どちらか一方の住まいを賃貸にすることも可能

独立タイプのデメリット

・共有タイプ・部分共有タイプよりも建築コストや水光熱費は高め
・お互いに顔を合わせる機会が少なく、交流が希薄になりがち

独立タイプの間取り4種

独立タイプの二世帯住宅は、さらに4つのタイプに分けることができます。

上下独立・外階段タイプ

住まいを上下階で区切り、フロアごとに各世帯が生活するタイプです。お互いに行き来をするときは外階段を利用します。
1フロアで生活が完結するため、階段不要の1階はバリアフリーな住まいを望む高齢の親世帯に喜ばれそうです。ただし2階の物音が1階に響きやすいため、床の防音・遮音対策は必須です。

上下独立・外階段タイプ

上下独立・内階段タイプ

住まいを上下階で区切り、1世帯1フロアで生活するのは「上下独立・外階段タイプ」と同様ですが、こちらは2階に住む世帯が内階段を通って2階へと移動します。
内階段であっても、玄関は別々なのでお互いのペースで生活することができます。ただし2階の物音が1階に響きやすいため、床の防音・遮音対策は必須です。

上下独立・内階段タイプ

連棟・完全独立タイプ

住まいを内壁で区切り、左右に分かれて各世帯が生活する縦割り型のタイプです。
連棟・完全独立タイプは住まいの独立性が最も高く、1つの家というより共同住宅に近い感覚です。

連棟・完全独立タイプ

連棟・内扉タイプ

住まいを内壁で区切り、左右に分かれて各世帯が生活するのは「連棟・完全独立タイプ」と同様ですが、お互いが内部で行き来できる内扉を設けています。
内扉は、ふだんはカギをかけてお互いの独立性を保ち、介護のときは内扉を開放するなど、状況に応じて使い分けられます。

連棟・内扉タイプ

共有タイプ

個室以外のすべてを共有する、昔ながらの間取り

個室以外のすべてを共有する、昔ながらの間取り

「共有タイプ」は、親世帯と子世帯で玄関やリビング、キッチン・ダイニング、水まわりといった生活空間のほぼ全域を共有する間取りです。

アニメの「サザエさん」一家のように、みんなで賑やかに暮らす昔ながらの同居のイメージですが、どうしても距離感が近くなりがちで、近年の新築では見かけることが少なくなっています。共有タイプを選択する場合は、プライバシーを確保するために、1人になれる個室を設けておきましょう。

  • プライバシー性…△
  • 行き来のしやすさ…◎
  • コスト面…◎

共有タイプのメリット

・親世帯と子世帯の交流が多く、育児や家事の協力が得られやすい
・水まわりなどを共有するため、建築コストや水光熱費を抑えられる
・スペースを効率よく使えるので、狭い敷地でも建てやすい

共有タイプのデメリット

・プライバシーが確保しにくい
・浴室や洗面台の使用時間や、物音が気になることも

部分共有タイプ

生活スタイルに合わせて空間の一部を共有する

生活スタイルに合わせて空間の一部を共有する

「部分共有タイプ」は、住まいの中の一部を共有し、それ以外は別々に設ける間取りです。
たとえば、玄関のみ共有する、リビングは共有するけれどキッチン・ダイニングは別々にするなど、親世帯と子世帯の生活スタイルなどから共有スペースと分離スペースを振り分けていきます。

部分共有タイプは、独立タイプよりもコミュニケーションがとりやすく、共有タイプよりもプライバシーを確保しやすい、両者の「いいとこどり」のような距離感が得られるとして、近年、人気を集めています。

  • プライバシー性…〇
  • 行き来のしやすさ…〇
  • コスト面…〇
  • ※共有スペースの範囲などで評価は異なる

部分共有タイプのメリット

・適度な距離感があり、お互いの交流とプライバシーを確保できる
・生活スタイルによって共有スペースと分離スペースをカスタマイズできる
・共有スペースが多いほど、建設コストや水光熱費の節約になる

部分共有タイプのデメリット

・共有スペースが多いほど、物音やプライバシーが気になりやすい
・共有スペースが少ないほど、交流が希薄になりがち

スペースの「共有」or 「分離」の決め手は?

暮らしやすさやコスト面など、多角的に検討したい

暮らしやすさやコスト面など、多角的に検討したい

住まいの中の一部を共有する「部分共有タイプ」の間取りの場合、どこを共有し、どこを分離するかによって、お互いの暮らしやすさ、コスト面、生活空間の広さなどが変わってきます。
共有スペースと分離スペースを決める際は、予算はもちろん、お互いの生活スタイルや価値観、将来のことなどまで含めて、親世帯と子世帯でしっかりと話し合うことが大切です。

特に、以下のスペースは暮らし方に大きく関わる部分ですので、共有するか、それとも分離するかをよく考えておきましょう。

玄関

1つの玄関を共有すると一軒家としてのまとまりが出るほか、帰宅や外出の気配をお互いに感じられます。 一方、玄関を2つに分けると独立性が高くなり、玄関まわりに子どもの遊び道具などが散らかっていたり、帰宅時間が夜遅くなったりしても、気をつかう必要がありません。

玄関

リビング

リビングを共有すると親世帯と子世帯が顔を合わせる時間が増え、家事や子育ての協力体制が整いやすくなります。
ただ、どちらかの世帯の来客が多い場合、もう一方の世帯がリビングを使いづらく、不満に感じることがあるかも知れません。

リビング

キッチン・ダイニング

親世帯と子世帯の夕食時間が異なるなら、別々にキッチン・ダイニングを設けたほうがよいでしょう。 キッチンを共有する場合でも、世帯ごとに冷蔵庫を分けたり、共有のキッチンとは別にサブキッチンを導入したりする選択肢もあります。

キッチン・ダイニング

浴室

浴室などの水まわりは建築コストがかかるため、経済性や、1日の中で使う時間が限られていることなどを理由に共有するケースが目立ちます。
一方で、浴室を共有すると「入浴時間が重なる」「深夜の水音がうるさい」といった不満が出やすいことも。そうした状況を防ぐために、世帯ごとにシャワー室を設けるのも一考です。

浴室

洗面室

洗面室を1つにすると、朝の身支度で渋滞が起こる可能性があります。通勤・通学時間が重なるようなら、洗面所を別々に設けたほうがよいかも知れません。
ほかにも、お互いの生活スタイルによっては洗面室と脱衣室を分けたり、洗濯機を分けることも検討しましょう。

洗面室

交流スペースでつながりを深める

親世帯と子世帯のコミュニケーションの場を設けよう

親世帯と子世帯のコミュニケーションの場を設けよう

プライバシーを重視した独立タイプや部分共有タイプの二世帯住宅であっても、親世帯と子世帯が自然に交流できるスペースを設けると、世帯間のつながりを感じることができます。
たとえば、親世帯と子世帯の住まいを中庭で隔てて、その中庭のデッキスペースでバーベキューをしたり、第二のリビングのように使える趣味室で団らんを楽しむなど、自然に顔を合わせる機会を増やして、円満な関係を築きましょう。

まとめると…まとめると…

お互いの生活を理解して間取りに活かす。快適な暮らしは“程よい距離感”から!

お互いの生活を理解して間取りに活かす。快適な暮らしは“程よい距離感”から!

二世帯住宅のプランニングでは、共有するスペースと分離するスペースを整理して、親世帯と子世帯にとって程よい距離感のある間取りを考える必要があります。

“程よい距離感”は、各世帯の生活スタイルや価値観によってさまざまです。新居でどんな暮らしがしたいか、どのようにスペースを共有・分離すれば快適か…などをじっくり話し合って、快適な間取りを計画しましょう。

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最終更新日 2024年10月2日