夫婦2人の「住みづらい」を解消!子育て後の夫婦の住まいを考える

子育て後、暮らしやすい家のポイントは?

2022年5月9日 更新
子育て後、暮らしやすい家のポイントは?

リフォームや建て替え、住み替えの選択肢が固まったら、次は夫婦で「どんな家に暮らしたいか」を話し合ってみましょう。住まいに求めるものは人それぞれですが、ここでは子育てを終えた夫婦のライフスタイルを見据えた間取りや設備の一例を紹介します。

住みやすい広さ・間取りは?

2人暮らしにちょうどよい広さと間取りを考える

2人暮らしにちょうどよい広さと間取りを考える

家族構成によって、住みやすい広さや間取りは変わってきます。

・2人で心地よく暮らせる住宅面積の目安

家の広さは、広すぎても狭すぎても暮らしづらいもの。国土交通省が定める「住生活基本計画」では、家族が豊かに暮らすために必要な住宅面積の基準(誘導居住面積水準)を示しており、2人家族の場合、75㎡(都市部やその周辺では55㎡)あれば多様なライフスタイルに対応しやすいとしています。
実際に住みやすい広さは家財道具や数の量、部屋の使い方などにも左右されますが、これからの家の広さを考えるときの参考になさってください。

【豊かに暮らすために必要な住宅面積の基準(誘導居住面積水準)】
 世帯人数別の居住面積
単身者2人3人4人5人
都市部以外55㎡75㎡100㎡125㎡166㎡
都市部や
その周辺
40㎡55㎡75㎡95㎡109.3㎡

※国土交通省「住生活基本計画」より作成

・こまぎれ間取りを解消する

こまぎれ間取りを解消する

一昔前のファミリータイプの戸建て住宅では、4~5帖ほどの個室を含む4LDKや5LDK以上の間取りがよく見られました。このような間取りは個室のプライバシーを重視する一方で、部屋数が多い分、壁が多くて狭苦しい印象になりがちで、子どもが独立した後は使わない部屋が増えるデメリットも生じます。
夫婦2人きりの暮らしなら、あえて部屋数の多さにこだわらず、ゆったりとしたLDKと寝室、必要に応じて客間使いができる個室くらいでもいいかも知れません。今住んでいる家で使用頻度の高い部屋を思い浮かべながら、必要な部屋数や間取りを考えてみましょう。

・家事動線に配慮する

家事動線に配慮する

暮らしに必要不可欠な炊事、洗濯、掃除といった家事の動線を見直すことで、利便性がよくなるケースは少なくありません。特に洗濯は「洗濯機で洗う」→「干す」→「取り込んでしまう」という動作を行うために、脱衣洗面所からベランダ、各部屋のクローゼットまで移動する必要があり、家中の廊下や階段を歩き回る手間と時間がかかります。
リフォームの場合、水まわりのレイアウト変更は難しいことも多いのですが、一つ一つの家事動作がスムーズにつながるように、動線をコンパクトにまとめるのがおすすめ。家事動作の多いキッチンや水まわりをぐるりと一回りできる回遊型の動線も便利です。

・寝室はトイレの近くに

寝室はトイレの近くに

これから長く暮らす家だからこそ、将来の利便性も考えておきたいもの。年齢を重ねるとトイレの回数が増え、夜間もトイレに行くことが多くなります。このとき、転倒などのリスクを減らすために寝室とトイレは同じフロアに設置し、できれば寝室のすぐ近くにトイレがあると使いやすいでしょう。

・趣味室や書斎をつくる

趣味室や書斎をつくる

夫婦ふたりきりになって広さや部屋数の制約が少なくなった分、趣味や読書、PC作業などに打ち込めるような部屋をつくってはいかがでしょうか。今のままの家に住み続ける場合は、子ども部屋を趣味室や書斎にする選択肢もあります。楽器の演奏やホームシアターとして使用するときは、防音材や遮音材などを使って音漏れ対策をしましょう。

バリアフリーで快適に

今すぐ必要ではなくても、将来のために備えておきたい

今すぐ必要ではなくても、将来のために備えておきたい

高齢者や、介護が必要になったときに役立つバリアフリー。転ばぬ先の杖として、対策をしておきましょう。

・手すりをつける

手すりをつける

高齢になったときに備えて、我が家のバリアフリー対策についても考えておきましょう。誰でも年齢とともに歩く・座る・立つといった日常の動作がだんだんと困難になってきますが、手すりがあれば動作をサポートしてくれるだけでなく、万一の転倒・転落防止にもなります。
取り付ける場所は、玄関・廊下・階段・トイレ内・浴室内など。すぐに手すりをつけない場合も、前もって下地の補強をしておくと後づけがスムーズです。

・段差をなくす

段差をなくす

高齢になると、すり足で移動するようになるためちょっとした段差でもつまずきやすく、転倒・転落事故につながるおそれがあります。リフォームや建て替え、器具などの設置などで段差をなくしておきましょう。
たとえば、玄関先に段差があるときはスロープを設置し、廊下と部屋、部屋と部屋の間の敷居の段差はすりつけ板を取り付けましょう。浴室の出入り口の段差は、段差と同じ高さのすのこを敷くと解消できます。

・床材はすべりにくいものを

床材はすべりにくいものを

表面がツルツルしたフローリングや大理石の床は、すべりやすく転倒リスクが高まります。できればすべり止め加工をしたものを選ぶか、クッションフロアやフロアタイルのようにすべりにくい床材を選ぶのがおすすめです。階段の段鼻にはすべり止め(段鼻タイルなど)を取り付けます。
水に濡れるとすべりやすい浴室の床も、近年はすべり止め加工や水はけのよい床材がたくさん出ているので検討してみましょう。

・引き戸を採用する

引き戸を採用する

引き戸は開き戸よりも開閉がしやすく、開き戸のように可動域がデッドスペースになることもないため、スペースを広く使えるメリットがあります。レールのついた敷居と床の段差が気になりますが、先述のすりつけ板を取り付けるか、レールのない上吊りタイプの引き戸にすれば問題ありません。
一般的なサイズの引き戸の場合、全開にしたときの幅が73㎝程度と狭く、車イスでの出入りが困難です。車イスでの生活を考えるなら、全開幅90㎝以上のサイズの引き戸を選びましょう。

・平屋住宅にする

平屋住宅にする

平屋(1階建て住宅)は、各部屋がワンフロアにまとまっているので階段を昇り降りする必要がなく、年齢を重ねても暮らしやすい住まい。2階部分の重量が加わらない分、柱数の少ない広々としたLDK空間を実現できるなど間取りの自由度も高いのが特徴です。
近年、住宅メーカーが平屋のプランを大々的に打ち出したり、減築リフォームで2階部分を撤去して平屋にしたりするなど、平屋の人気が上昇中。上記のようなメリットが期待できる平屋ですが、一般的に2階建てよりも広い敷地が必要で、建築費用も高額であることを理解しておきましょう。

便利な収納や設備

使い勝手はもちろん、安全面も考えて選びたい

使い勝手はもちろん、安全面も考えて選びたい

これからの暮らしを考えて、使いやすさを優先した収納や設備を導入しましょう。

・出し入れしやすい収納

出し入れしやすい収納

子どもが独立した後は、夫婦2人で普段づかいする食器や衣類なども少なくなるため、大容量の収納にこだわらなくてもOK。それよりも、出し入れしにくい収納だと片付けが面倒になって部屋がちらかる原因となるので、扉のないオープン収納や、昇降式やスライド式の出し入れしやすい収納を選ぶとよいでしょう。

・IHクッキングヒーター

IHクッキングヒーター

火を使わないIHクッキングヒーターは消し忘れや着衣着火(※)による火災の危険がないことから、高齢になっても安心して料理しやすいといわれています。ただし、いざ高齢になってからガスコンロからIHクッキングヒーターに交換しても、操作が分かりにくくて結局使わなくなってしまった…という声も。料理をするなら、キッチンの熱源は毎日利用することになるので、できれば早いうちに導入したい設備です。
※着衣着火とは…調理中にコンロの火が袖口に燃え移るなど、着ている衣服に火がつく火災のこと。

・ホームエレベーター

ホームエレベーター

上下階の移動や重い荷物の持ち運びが楽になるホームエレベーターは、小型のものなら1畳分のスペースがあれば設置可能。2階・3階にリビングやキッチンのある間取りでも、ホームエレベーターがあれば長く快適に暮らせます。
後付けできるので、新築時は吹抜けや収納スペースとして利用し、将来必要になったときにリフォームでホームエレベーターを設置してもよいでしょう。

ちょこっとメモ!ちょこっとメモ!

設置したものの「実は不要だった…」そんな部屋や設備とは

設置したものの「実は不要だった…」そんな部屋や設備とは

子どもが独立した後の暮らしに役立つ部屋や設備がある一方で、設置したものの、ほとんど使用しない部屋や設備もあるようです。
よく聞かれるのは、「加齢で床に座りづらくなって和室を使わなくなった」「ロフトや小屋裏収納の梯子の昇り降りが怖くてできない」など。玄関の親子ドアも、大型家具の搬入には便利ですが「夫婦2人暮らしだとソファやテーブルも小さいサイズで十分なので、子ドアを使う機会はない」といった声もあります。

家の中の温度差をなくす

急激な温度差によるヒートショック事故を防ぐ

急激な温度差によるヒートショック事故を防ぐ

冬場に暖かいリビングから寒いトイレや浴室に移動すると、急激な温度差で血圧が大きく変動して健康障害(ヒートショック)を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中の原因となることがあります。ヒートショックは特に高齢者に起こりやすく、入浴時にヒートショックで倒れて、そのまま湯船で溺れて亡くなってしまう事故も多数発生しています。
ヒートショックを防ぐためには、室温の低い脱衣所やトイレに暖房器具(小型のヒーターなど)を設置して、家の中の温度差を緩和することです。また、万一倒れたときに危険を知らせる緊急呼び出しボタンを設置するのもおすすめです。

まとめると…まとめると…

いつまでも快適な暮らしのために、将来をイメージして住まいに生かす!

投資方法ごとに異なるメリット・デメリット。それぞれの特徴を知ることが大切!

長く暮らしていく家だからこそ、高齢になっても快適な間取りや設備に気を配りたいもの。リフォームや建て替え、住み替えをするときは、今の暮らしだけではなく、将来のライフスタイルや心身の変化などもイメージしてプランを検討しましょう。