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2014年12月20日 更新

食…和を味わう

2013年12月、日本の「和食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。日本の自然環境や異文化との触れあいを通して培われた食の知恵は、現在、味や見た目はもちろん栄養バランスにもすぐれた健康食として世界中から注目を集めています。

毎日食べたい!「和食」

Step.1 和食を知る

歴史 和食に欠かせないお米が日本に伝わったのは縄文時代晩期のこと。大陸経由で北九州にもたらされた稲作は、またたく間に東北地方まで伝播しました。これによって狩猟や木の実の採取が中心であった食習慣から、お米などの穀物を主食とする食生活へと変化していきます。
四方を海に囲まれた日本は魚介が豊富ですが、仏教の影響で675年に肉食禁止令が発布されると、魚介を用いた料理がさらに発達するようになりました。魚が得られにくい内陸部でも食べられるよう、長期保存が可能な寿司(なれ寿司)、干物などの技術も生まれました。

現在も続く和食の「一汁三菜」のスタイルは、平安時代の末期に登場したと言われています。平安時代の上流階級には「大饗(だいきょう)」という宴会料理が見られますが、鎌倉時代の武家社会になると、大饗を簡略化した「本膳料理(ほんぜんりょうり)」があらわれ、室町時代にはさらに不必要な部分が削られて、質素な食事を意味する「懐石料理」(※1)へと発展しました。懐石料理と同じく本膳料理をベースにした「会席料理」(※2)は、酒宴に始まり最後はご飯と汁物で締めくくる和のコース料理で、こちらも江戸時代の誕生以来、現在までその伝統が受け継がれています。

※1 ※2
本膳料理を起源に持つ懐石料理と会席料理は、もともとはどちらも「会席」と書かれており、人が集まって食べる料理という意味合いがありました。現在まで続く懐石料理は戦国時代に茶会の料理として誕生し、江戸時代に茶道が発展するにあたり、禅宗で「温めた石を懐に抱いて修行中の空腹と寒さをしのいだ」という話があることから「懐石」と書かれるようになりました。
一方、会席料理は本膳料理や懐石料理を参考に、料理屋などの宴会で供されるコース料理として江戸時代に広まりました。

特徴 ご飯と「汁物・主菜・副菜・副々菜(香の物)」から成る「一汁三菜」を組み合わせるスタイルが一般的です。主食であるお米や麦、雑穀、芋類などからはエネルギーを、主菜の魚介類から動物性たんぱく質を、副菜・副々菜・汁物の野菜、豆類、芋類、海草類などからはビタミン、ミネラル、食物性たんぱく質をバランスよく摂取することができます。
また、自然とのかかわりが深い日本人は、和食にも素材の持ち味を活かす工夫を重ねてきました。出汁(だし)で素材のうま味を引き立てる淡泊な味付けや、魚介を生でいただく刺身などには自然の恵みをそのまま味わう精神があらわれています。

海外から見た和食の魅力とは…?

フランスの美食術、イタリア・ギリシャなどの地中海沿岸諸国の料理、韓国のキムジャン文化などと並び、ユネスコ無形文化遺産に登録されている和食文化。登録の審査にあたる各国の政府間委員会では、和食のどのようなポイントが評価されたのでしょうか。

ユネスコが認めた和食の魅力

①新鮮で多彩な海の幸と山の幸
南北に細長い日本列島は自然の変化が豊かで、季節ごとにさまざまな食材を利用することができます。新鮮で多彩な食材と、そのうま味を引き出す調理法が和食文化を支えています。
②栄養バランスにすぐれた健康食
和食には、お米、魚介、野菜、豆類、芋類、海草類などがバランスよく含まれています。動物性油脂をあまり使わないため肥満防止や長寿に効果的とされています。
③見た目の美しさ
「目と舌で味わう」と言われる和食。料理に葉や花などをあしらって美しく盛りつけたり、季節に合った器を使用したりすることで、「おもてなしの心」を伝えます。
④年中行事とのかかわり
お正月のおせち料理、上巳の節供(桃の節供)のちらし寿司など、行事ごとにそれぞれの旬の食材を取り入れた「行事食」があり、季節の風物詩となっています。家族や地域の人たちと食事をともにすることは、絆の強化にもつながります。

Step.2 和食に親しむ

普段何気なく食べている和食ですが、日本独自の文化を理解することで、より深い味わいを楽しみましょう。

お箸の国と言えば日本!

お箸を使って食事をとる国は日本のほかにも中国、韓国、ベトナムなどがありますが、日本ほど、食事のさまざまな場面でお箸を多用する国はありません。
お箸という2本の棒を使って、つまむ、すくう、割る、ほぐすなど食べる時に必要な動作のすべてを行う日本人は、海外の人の目から見ると、とても器用に見えるそうです。けれども最近は、お箸を正しく持てない人が増えているという問題も。お箸を正しく持つことは食べ物を丁寧にいただくマナーにつながりますから、きちんと習得したいものですね。

和食の驚くべき健康効果

世界有数の長寿国として知られる日本。2012年の日本人女性の平均寿命は86.41歳と世界第1位、男性も79.94歳で世界5位にランクインしています。そんな長寿の秘訣が、和食にあることをご存じでしょうか?

魚に含まれるEPA、DHA 和食の特徴と言えば、肉が少なく、魚介をふんだんに取り入れていること。中でもサバやアジ、イワシなどの青魚、マグロ、鮭などにはエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。
EPAとDHAを摂取すると相乗効果で血液をサラサラにする作用があり、心筋梗塞や虚血性心疾患などの予防に役立ちます。また、EPAには生活習慣病の予防・改善、アレルギー症状の緩和、炎症の抑制などの効果があり、DHAには記憶力の向上やアルツハイマー型認知症の症状緩和、精神を安定させる効果などがあきらかになっています。

豊富な発酵食品 高温多湿の気候で微生物が繁殖しやすい日本では、昔から味噌、醤油、納豆、漬物などの発酵食品が食事に取り入れられています。これらの発酵食品は植物性乳酸菌や食物繊維が豊富。発酵食品を摂ることで腸内の環境が良好になり、免疫力の向上や新陳代謝の活発化、血流の改善などの効果があるとされています。
味噌や醤油は和食には欠かせない調味料なので、普段の食事で無理なく摂取できるのも魅力的。ただし多用すると塩分の摂取量が増えやすいという欠点もありますので、なるべく減塩味噌や減塩醤油を使うなどして、おいしくてヘルシーな和食を楽しみましょう。

年中行事と和食

自然の恵みを生活の糧とする日本人には、農業や漁業などの生業の節目に神様にお供えをして、豊作や豊漁を祈る行事があります。これらの行事は食事と関連するものが多く、行事ごとに決められた特別な食事(行事食)が用意されました。行事の多くは地域ぐるみで行われ、みんなで行事食を食べることによって絆を深めていたのです。
時代は移り変わり、行事によっては形骸化したり消滅したりするものも増えましたが、お正月のおせち料理のように季節の風物詩として行事食の伝統が息づいています。
あなたも家族や親族で季節の節目を祝い、ともに食事をして信頼関係を育んでみませんか?
※これらの行事のほとんどは太陰暦で行われますが、ここでは太陽暦で紹介します。

年中行事と行事食

行事名代表的な行事食
1月1日〜7日正月おせち料理、お屠蘇、雑煮
7日人日の節供七草がゆ
11日鏡開き雑煮、おしるこ
15日小正月小豆がゆ
20日二十日正月正月の鰤や鮭の骨を野菜と煮たもの
2月3日頃節分福豆、恵方巻き
9日頃初午いなり寿司
3月3日上巳の節供(桃の節供)ちらし寿司、白酒、草餅、蛤のお吸い物、ひなあられ
21日頃春分・彼岸ぼた餅
4月8日灌仏会(花祭り)甘茶
5月2日頃八十八夜新茶
5日頃端午の節供柏餅、ちまき、しょうぶ酒
6月21日頃夏至たこ
30日夏越の祓小豆入りのお菓子
7月7日七夕の節供そうめん
13日~16日頃お盆おだんご
19日~8月7日頃土用の丑の日うなぎ
8月13日~16日頃お盆※月遅れおだんご
9月9日重陽の節供菊酒、栗ご飯
中旬仲秋の名月(十五夜)月見だんご、栗ご飯、里芋
23日頃秋分・彼岸おはぎ
10月20日えびす講べったら漬
11月15日七五三千歳飴
12月22日頃冬至かぼちゃ
31日大晦日年越しそば