【専門家監修】中古住宅にかかる固定資産税!高くなることはあるの?

2019年9月5日

人が住むための中古住宅でも新築住宅でも、固定資産税の対象となる家屋(納付書記載名:今回の焦点は住宅用の建物)ですから購入して登記などをすれば固定資産税を支払うことになります。一般的には、減額措置などで優遇されている新築に比べても中古のほうが経過的な補正があり固定資産税も低くなる傾向があると言われています。ただし、3年(据置あり)に一度は改定される固定資産税はその時折の土地や家屋の価値によって決まるものです。そのため、条件によっては、高い税金を取られることも全くないとはいえません。そこで今回は、「中古住宅でも新築するより固定資産税が高くなることがあるのか?」など、中古住宅にかかる固定資産税の一般的な基礎知識についてもう少し詳しく解説します。

中古住宅でも土地の固定資産税が安くなる?

固定資産税とは、実際は有形償却資産も含まれますが、一般的に知られているのは土地や家屋といった固定資産に課せられる税金の一種(地方税であり国税ではありまあせん)です。今回は土地や家屋(中でも今回は住宅用の建物)について解説をします。正常な固定資産(免税対象物件を除く)は所有しているだけで税金が課されますが、取り決めがあり固定資産税課税台帳に賦課期日である毎年1月1日現在の所有者(登記簿などで把握)に対して納付を請求されることになります。税率は標準税率1.4%(同時に通知される都市計画税は0.3%)で、土地と家屋それぞれに課せられます。ただし、標準税率1.4%は家屋の購入価格(時価)にかけられるわけではありません。

固定資産税の税額は「市町村が担当する固定資産税評価額(※注意事項:土地:一般的には平成6年の税制改正後は国土交通省が担当する公示時価の70%程度に調整される)(家屋:一般的には建築費の約50%~70%程度が評価額といわれる)」という課税標準額を基に「土地、家屋」に標準税率をかけたもので求められます。
ちなみに相続税の課税時に使われる国税局が担当する路線価とは国税局や税務署にて毎年7月に公表されている(公示価格の80%を目安としている)ものですが、路線価のない地域ではこの固定資産税評価額が使われています。

従って<路線価×住宅用土地面積>でおよその推測値の把握は可能です。一方、家屋の価値は再建築費用から経過年数による減価分(経年減点補正率)を差し引いて決められます。ただし、免税点(土地30万円・家屋20万円)を除き固定資産税が0円にまで減価される(ただになる)ものでもありません。家屋の質の良し悪しにも差はありますが、家屋の評価額は下限の2割を超えて下がり続けることもないのです。これを踏まえ固定資産税の税額を計算する際は、まず住宅用の土地と家屋の課税上の価値を測定し、そこで算出された固定資産税評価額(※注意事項あり:課税標準額)に税率をかけあわせるというのが普通の方法です。ただし、役所(市町村)といえども人が評価(原則:1棟の家屋毎に評価)するため、間違いが全く起こらないわけではありません。そこで、参考となる固定資産税課税台帳(課税標準額の価格が登録されている)ですが期間に関係なくご自分の土地・建物であれば閲覧(土日祝など不可日に注意:縦覧期間中は無料)ができます。また、固定資産税納税者であれば誰でも市町村で縦覧(毎年:4月1日~など自治体による期間限定ですが無料)が可能です。
調べて誤りがありそうだと不服を申し立てる場合は、固定資産評価額の価格については市町村の固定資産評価審査委員会に、課税標準額や税額などについては市町村の固定資産税課(市長あて)に、どちらも通知を受けた日の翌日より3カ月以内に審査の申し出をすることも可能ですのでおかしいと思ったら検討しましょう。

また、中古住宅といえども住宅ですので住宅用地に対する固定資産税の特例措置を受けることで、土地にかかる税金を安くすることができます。住宅用地の場合、その用地面積が200平方メートル以内であれば、住宅用地相当分(併用住宅の場合は居住用部分)に対する課税標準の特例措置(小規模住宅用地)が適用され、固定資産税の課税評価額が6分の1(0.3%の都市計画税も3分の1)に減額されます。また、この住宅用地の面積が200平方メートルを超えている一般住宅用地(家屋の総床免責の10倍が限度)場合でも、課税評価額は3分の1(0.3%の都市計画税も3分の2)に減額され、住宅の大小にかかわらず中古住宅(ただし、今後も住居として使用する)の場合でもこうした減額措置(制度改正に注意!)を受け続けることが可能です。

固定資産税が減額されるリフォームとは?

中古住宅の場合、購入したときから筑後〇年を経て住宅が傷んでいることもあるため、購入後にリフォーム(改修工事)をすることも多いのです。もし、購入した中古住宅をリフォームしようとお考えならば、固定資産税の減額措置を受けられる特例を利用したいところです(特例措置の期限は延長されることも考えられますが期限には注意が必要)。一定の条件を満たすことで、リフォームした中古住宅の固定資産税が減税されることがあります。

たとえば、耐震のためのリフォームを完了した場合です。築年数の古い中古住宅では、現在の耐震基準を満たしていないことがあります。そのため、現在の耐震基準を満たすための耐震改修工事には、原則翌年1年間に限り固定資産税の減額の特例措置の適用を受けることができます。ただし、すべての耐震リフォームに特例措置が適用されるわけではありません。耐震リフォームのケースですとその主な条件は1987年(昭和57年)以前から存在する住宅で現行の耐震基準に適合のほか、申告期限(改修完了後3カ月以内)などがあり、ポイントは改修工事の費用が50万円以上(賃貸住宅は不可)かかった場合です。
その場合、1戸当たり床面積120平方メートル相当分までの部分に対して、翌年の固定資産税が通常の2分の1になるという減額措置を受けることができます。適用期間は原則1年のみですが、災害時に避難経路となる(自治体が指定する道路の沿道に位置する)建物の耐震化には、適用期間が2年になるという優遇措置があります。

また、バリアフリー改修工事をした場合でも、固定資産税の減額措置を受けることが可能です。この場合も、主な条件は工事費用が50万円以上(賃貸住宅は不可)かかった場合に限られ、その適用範囲は1戸当たり床面積100平方メートル相当分までの部分となっています。税額が通常の3分の1になり、適用期間はリフォーム翌年の1年間です。さらに、省エネ改修工事(天井・床・壁・窓などの断熱)にも減額措置があります。省エネ改修工事は、主な要件として省エネ基準に適合はもちろん、工事費用が50万円以上かかった場合に、1戸当たり床面積120平方メートル相当分までの部分に翌年1年間のみ、税額が3分の1に減額されます。さらに、認定長期優良住宅の基準をクリアした改修工事の場合は3分の2が減額されます。また、省エネやバリアフリーの改修工事をした場合、住宅の総床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下であることが必要です。

リフォームでもしも住宅の価値が上がったら?

中古住宅をリフォームすれば、当然その分住宅のグレードはアップします。固定資産税は土地と家屋(住宅用の建物)の価値によって決まるため、リフォームによって住宅用の建物の価値が高まれば、その分だけ固定資産税の税額も必然的に上がってしまう可能性があります。ただし、リフォームといっても、どこをどのように改修工事するかはそれぞれの事情によって千差万別です。増築や改築するのもリフォームなら、外壁を補修しただけでもリフォームになります。リフォームをしたいけれどこれに伴う費用も気になりますね。それでは、どの程度住宅用の建物をリフォームすると、固定資産税の税額が上がるほどのリフォームになるのでしょうか。

通常、固定資産税の評価額は、評価替えを毎年行うには市町村側の所要時間やコストがかさむ他、また個々の固定資産の周囲の環境も変わるため、3年に1度の周期での改定(土地・家屋共に原則3年据置:次回は令和3年に評価替え)が行われています。その方法は、評価員(市町村の職員)がそれぞれの住宅をひとつひとつ回り、詳しく点検することによって「適正な時価」として改定されます。ただし、通常業務を抱える評価員が確認する住宅は膨大で数が多く、すべての住宅を詳しく点検することは理想ですが物理的には不可能です。そのため、評価員は前回の評価替え以降のリフォームがどの程度家屋(住宅用の建物)の価値を高めたのか、そこまで詳しく確認するようなことは通常はしないといえます。ですから、壁紙を直したり、水まわりや外壁を補修したりする程度であれば、固定資産税の評価に影響することはほとんどありません。

とはいえ、大がかりな増改築をする場合や、主要部分の大規模な変更をする場合などは、役所にリフォーム(建築基準法上:大規模な修繕や模様替え)の建築確認申請を出すことになります。したがって、いわゆる「建築確認」が必要な大がかりなリフォームの場合は、改修工事の後に再評価を受けて、あらためて固定資産税の評価額が決められるため、リフォーム前より税額が増える可能性がその分高くなるといえます。

中古住宅でも固定資産税が高い時期とは?

通常は新築よりも固定資産税が安いといわれている中古住宅でも、購入時期によっては新築より高くなってしまうことがあります。実は新築住宅にも、固定資産税の減額措置があり、土地(住宅用地となる)については床面積に応じて小規模住宅用地(200平方メートル)で6分の1かこれ以外の一般住宅用地で3分の1という減額措置を受けることが可能だからです。つまり、土地に関しては、住宅用地として使用する限り新築でも中古でも同じだけ固定資産税の減額措置を受けられることになります。

中古住宅と新築住宅で評価額に違いが出るのは家屋です。もちろん、家屋は経過年数によって劣化していれば評価額も下がるので、一般的には中古住宅のほうが固定資産税も安くなります。しかしながら、新築住宅には中古住宅にはない減額措置があります。すなわち、新築住宅の家屋に関する部分は、一般の住宅で120平方メートルの床面積相当分まで3年間にわたり固定資産税が2分の1に減額されるのです。しかも、認定優良住宅で3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅であれば、2分の1という減額期間が7年間にも延長されます(これ以外の認定優良住宅は5年間)。

このように、新築住宅は購入から数年以内なら家屋への固定資産税も減額されます。一方、中古住宅には、このような家屋への減額措置はありません。ただし、中古住宅の固定資産税評価額は、経年減点補正率といって築年数に応じて減価されるという特異な性質を持ちます。購入時期の中古住宅の経年減点補正率が低くなっている場合は良いのですが、まだ経年減点補正率が高い時期の中古住宅は、当然評価額も高くなる傾向にあるわけですので、減額措置を受けられる新築住宅よりも固定資産税が高くなってしまう可能性がありますので注意が必要です。

減額の要件を正しく理解しておこう

今回ご紹介しましたように固定資産税にはさまざまな減額措置があることから、購入の時期によっては中古住宅でも新築住宅より必ずしも固定資産税が安くなるとは限りません。家屋(建物)に関する減額措置がない中古住宅では、購入する時期によっては新築する場合よりも固定資産税が高くなってしまうこともあるので注意が必要です。また、中古住宅の場合はリフォームをするケースも多いと思われますので、事前に減額措置の適用を踏まえたリフォーム方法の検討も必要です。また、固定資産税を正確に把握するためにも、減額措置が適用されるさまざまな要件をしっかり確認して、ご自分の住宅用の土地と家屋(建物)の固定資産税が実際いくらになるのかきちんと把握しておきましょう。その上で固定資産の価格の評価や税額などに不服がある場合は審査の申し出を検討しましょう。

執筆者プロフィール

木村 正人
木村 正人

木村 正人(ファイナンシャル・プランナ- CFP®)
GLGカウンシルメンバー
FP1-オフイス21 代表 (エフピーワンオフイスニジュウイチ)
ライフプラン&マネ-に関する相談・サポート
日経セミナ-・企業などで講演の他、FP・証券・会計等の研修会講師、
専門誌・FPコラムなどの執筆を行う


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