【専門家監修】新築時に考えたい!間取り変更が自由なSI住宅

2019年7月5日

住宅を購入する際、さまざまなことを想定し熟考したつもりでも、実際にライフスタイルやライフステージが変化すると、間取りなどに不便が生じることが多くなります。その場合、一般的な住宅では、大掛かりなリフォームに踏み切る人も少なくはありません。そういった状況を防ぐために、注文住宅を建てるときの選択肢の一つとして、自由に間取り変更ができるSI住宅を紹介します。

SI住宅とはどんな家?

SI住宅とは、スケルトン・インフィルシステムの略称です。建築物の外装や柱などの骨格部分である、構造躯体「スケルトン」と建物の間取りや内装などの「インフィル」を分離させた住宅をSI住宅と呼びます。従来の工法では、柱や梁などの骨格と台所や排水口、浴室などの内装が一体化されていました。そのような住宅の場合、傷みやすい内装の寿命が、建物全体の寿命となってしまいます。その結果、内装の耐用年数に合わせて建て替えなくてはなりませんでした。
一方、SI住宅の場合、外壁で建物全体を支える工法などが採用されます。この工法では、内部に建物を支える柱などを設ける必要がなく、寿命の長いスケルトンと寿命の短いインフィルを分けることが可能です。そして、構造躯体を丈夫にし、寿命が長く耐震性の高い住宅を建てることもできます。加えて、内装が傷んだり、不便になったりしたら内装や間取りのみをリフォームすればいいのです。このように、建物を構造躯体と内装に分けて合理的に活用できるのがSI住宅の特徴だといえます。

間取りが自由!SI住宅のメリット

SI住宅には、次のようなメリットがあります。
・内装のメンテナンスが簡単
SI住宅では、従来の工法で建てた住宅と異なり、床や天井、内壁などが比較的簡単に取り換えられます。また、一般的に大きな工事になりがちな配管や電気設備も、構造躯体を傷つけることなく交換することが可能です。

・間取り変更に柔軟に対応できる
SI住宅には、従来の民家の中央部分にあるような柱がありません。そのため、住む人のライフステージの変化に合わせた間取りに変更することが可能です。たとえば、住宅を建てたころは、小さかった子どもも居住年数とともに、自分の部屋が必要な年齢になります。そのようなとき、SI住宅なら壁を作って部屋を増やすことができるのです。また、両親の介護が必要になったら、介護と家事の導線を考えた間取りに変更することもできます。
また、室内の何処の位置に水周りの設備機器が移動しても、下水ルートに困らぬよう、建物周囲に排水ルートを確保しておくこともポイントです。

・耐久性や耐震性に優れている
SI住宅は、外壁で建物全体を支えるため、構造躯体が丈夫さや耐久性を備え持っています。そのため、耐震性にも優れているものが数多く存在します。構造躯体の多くは、60年から100年以上の耐久性をもつものも少なくないため、内装のみを交換することで長期間住み続けることが可能です。

SI住宅には税制面での優遇も?

住宅を購入する際、さまざまな優遇制度があります。その一つが、2009年にスタートした、税制面での優遇が受けられる「長期優良住宅認定制度」です。この制度では、住宅の面積や耐震性など満たさなければならない条件がいくつもあります。そのすべてをクリアするのは大変ですが、SI住宅はその条件にマッチした住宅の一つなのです。そこで、SI住宅を新築するなら知っておきたい「長期優良住宅認定制度」の条件や注意点などについて紹介します。

長期優良住宅の条件

長期優良住宅は、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて認定される制度です。認定されるためには、さまざまな条件をクリアしなくてはなりません。ここでは、注文住宅を建築する際に参考になる長期優良住宅の認定基準を紹介します。

・住戸面積
一戸建ては75平方メートル以上、少なくとも一つのフロアの床面積が40平方メートル以上あること
・可変性
ライフスタイルの変化に応じて間取り変更などが可能になっていること
・耐震性
極めてまれに発生する地震に対し、継続して住むための改修の容易化を図るため、損傷レベルの低減を図ること(耐震等級2以上または免震建築物など)
・維持管理・更新の容易性
構造躯体に比べて耐用年数が短い内装や設備について、維持管理を容易に行うために必要な措置が講じられていること

長期優良住宅の税制面でのメリット

長期にわたり良い状態で快適に過ごせる住宅は、一般の住宅より初期コストがかかる場合が多くみられます。しかし、税制面で優遇されることで、コストの負担も結果的に軽くすることが可能です。ここでは、長期優良住宅の税制面でのメリットの一部を紹介します。

・住宅ローン控除限度額の引き上げ
住宅ローンを借りて家を建てたり買ったりした場合に、年末ローン残高の1%が10年間、所得税と住民税から控除される住宅ローン控除(住宅ローン減税)されます。10年間の最大控除額は一般住宅だと400万円ですが、長期優良住宅は500万円です。

・固定資産税減額の適用期間延長
長期優良住宅は税額が1/2に減額される減税措置の適用期間が延長されます。
一戸建て1~5年間

・登録免許税の引下げ
長期優良住宅は税率がさらに引き下げられます。
保存登記0.1%
移転登記一戸建て0.2%

長期優良住宅の注意点

メリットが豊富に思える長期優良住宅の制度ですが、認定をうけるための注意点もあります。その一つが、着工前の申請です。通常、建築主か分譲事業者が行いますが、これを忘れてしまうと申請ができなくなります。そして、工事完了後は、認定された通りに工事が完了したことを報告しなくてはなりません。また、工事完了後も10年以内ごとに30年以上点検や修繕などを行い、その記録を作成し保存することが義務付けられています。
このように、長期優良住宅に認定された後も、快適な住宅を維持するための手間がかかることは否定できません。そして、認定基準を満たすためには、耐久性や耐震性のある建物である必要があるため、建築費が一般的な住宅の1.2~1.3倍程度になります。加えて、認定を受けるためには、手数料も必要です。

あらゆる可能性を考慮した計画を!

住宅を購入したら、長期にわたりそこで暮らすことになります。そして、その間に最適な間取りは、必ずしも一つではありません。そのため、住宅を購入する際は、結婚や出産、子どもの独立や老後まで、さまざまなライフステージでの使い勝手を考慮したうえで選ぶことをおすすめします。とはいえ、すべてのライフステージに適した間取りを選ぶのは、至難の業でしょう。そこでおすすめしたいのが、柔軟な間取り変更ができ、耐久性にも優れ、長く住み続けることが可能なSI住宅です。しかも、SI住宅なら、税制面で優遇される長期優良住宅の対象にもなります。長期優良住宅の認定には注意点もありますが、あらゆる可能性を考えたうえで、新築注文住宅を建てるときの選択肢の一つにしてはいかがでしょうか。

参考:長期優良住宅の条件
 国土交通省長期優良住宅HP 
 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000006.html

執筆者プロフィール

斎藤 進一
斎藤 進一

斎藤 進一(一級建築士)
大手ゼネコンで施工管理を経験し、ハウスメーカー系工務店で設計・施工を経験。高齢者・障害者のバリアフリー住宅の専門家が当時居なかったことから2004年に「やすらぎ介護福祉設計」を創業する。


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