【専門家執筆】住宅購入時に親や親戚からお金を借りて、贈与と疑われないための注意点
ライフイベントの中で1品としては最も高価な買い物であると言っていいのが
住宅購入です。住宅購入によって購入時はもちろん、購入後も家計収支内容が大きく変化します。特に住宅購入時には頭金を支払うことになりますので大きな資金が家計から支出されます。その住宅購入に際してほとんどの方が金融機関と住宅ローンの契約を行い資金を調達しますが、合わせて親や親戚から住宅購入のためにお金を借りることもあるかと思います。親や親戚からお金を借りること自体は問題のない経済行為ですが、他人からお金を借りた時と同じような手続きを行っておかないと親や親戚からお金を借りたつもりが税務署に贈与と判断され、課税の対象となってしまうこともあります。以下、親や親戚からお金を借りたことが贈与にならないようにするためにはどのようにしたら良いのか見ていきたいと思います。
親や親戚からお金を借りる場合のメリット
親や親戚からお金を借りるメリットとして
「金融機関等に支払う各種手数料が不要」
「金融機関が行うほどの厳しい審査は不要」
「返済に困ったときにはすぐ相談に乗ってもらえる」
などが考えられます。
借入にかかるコストが不要であることが大きなメリットとして掲げられます。
どのような時に贈与と判断される可能性が高いか?
◆以下に掲げる内容に該当する場合は「贈与」と判断される可能性が高いです。
・金銭消費貸借契約を行っていない(金銭消費貸借契約書を交わしていない)
・金銭消費貸借契約を行い借入を行ったが、返済実績がない
・金銭消費貸借契約書の完済時の親や親戚の年齢が高齢すぎる
(通常であれば存命していないであろう年齢)場合
・借り入れた金額が高額で年収などから判断し返済できない可能性が高い場合
◆贈与と判断された場合の贈与税の金額はいくら?
贈与税の計算は一般贈与財産と特例贈与財産とに分類され、
例えば1,000万円の贈与を受けた場合の計算は以下の通りです。
<一般贈与財産>
(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円
<特例贈与財産>
(1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円
※特例贈与とは
直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与をいい、例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などがこれに該当します(夫の父からの贈与等には使用できません)
贈与と判断されないようにするための対策
親や親戚から借りたお金が贈与と判断されないようにするための対策やその他の注意点としては、
・金銭消費貸借契約を行い、金銭消費貸借契約書を交わすこと
・金銭消費貸借契約に基づき返済を実行すること
・金銭消費貸借契約においては利息を付すなど一般的に行われる金銭消費貸借契約と同様の内容で契約を行うこと
・金銭のやりとりは客観的証拠の残る銀行振込で行うこと
・金銭を借りた相手(親や親戚)が亡くなった場合、返済残高がある場合には、その残高は亡くなった方の相続財産となり相続した方が返済相手となる点に注意すること
贈与の非課税についても検討、活用する
冒頭にも述べましたが住宅を取得するには多額の資金が必要です。この住宅取得のために親や親族からの資金協力を得る方法には「借入」と「贈与」があり、特に贈与は「住宅取得資金贈与の特例」「相続時精算課税の選択の特例」という贈与税が非課税になる特例があります。
<住宅取得資金贈与の特例とは>
父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額まで贈与税が非課税となる制度です。
<相続時精算課税選択の特例とは>
父母又は祖父母からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合で、一定の要件を満たすときには相続時精算課税を選択することができます。
親や親戚からお金を借りる形ではなく、贈与税の非課税の特例を活用し贈与を
受けることができれば毎月返済する金額がその分減るため月々の家計のやりくり
がその分楽になります。
まとめ
住宅購入は、自分や家族の要望に近づけた物件選びから、頭金・住宅ローンなどの資金準備、購入契約後の引き渡し、引っ越しなどお金に関すること以外にも大きな変化のあるライフイベントです。
親や親族からの借入はつい甘えが出たり、気が緩みがちになったりします。しかし、相手がどのような方でも借入は借入であり、借り入れた以上返済することは、当たり前のことです。
親や親族からの借入を贈与と誤解されないようにするには、他の一般的な借入と同様な手続きを行い、客観的証拠を残す、記録に残す、確実に返済を実行することを忘れないようにしてください。