【専門家監修】制度利用で費用を節約?消費税増税後の新築住宅購入

2019年7月1日

消費税増税はこれまで二度にわたって延期されてきました。しかし、2019年10月には消費税が10%に引き上げられることが予定され、不動産業界では消費税増税を前に駆け込み需要が予想されています。とはいえ、不動産は大きな買い物だけに焦るのは禁物です。そこで、この記事では消費税増税後に利用できる軽減措置などについて詳しく紹介します。

消費税増税後に利用できる軽減措置

大きな買い物である不動産の購入は、当然ながら消費税の負担も大きくなりがちです。たとえば3,000万円の家を建てるときにかかる消費税は8%だと240万円ですが、10%に引き上げられると300万円になります。2%消費税が上がっただけで、60万円の差が出てしまうのです。一般の消費者にとって60万円の差は大きいですし、それだけあれば新居に必要な家具や家電製品などを購入する費用に充てることもできます。そのため、消費税が上がって余分に60万円支払わなければいけないならば、上がる前に購入してしまおうと考えるのも無理のないことです。
ただ、増税前に市場が活発になっても、増税後に冷え込んでしまえば経済全体としては悪影響が懸念されます。そのため、政府は消費税増税後の住宅購入を支援し、消費が落ち込まないように、さまざまな軽減措置を練っているのです。各軽減措置を利用するには条件があるため、事前にしっかりチェックしておきましょう。

住宅ローン控除の期間延長

住宅の購入にあったって、全額をキャッシュで支払える人はそう多くありません。通常は数十年の住宅ローンを組んで購入します。住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合に、負担を軽減してくれる対策が住宅ローン控除です。住宅購入後10年間は、年末時点での住宅ローン残高または取得対価の1%が所得税を計算する際に控除されます。もし、所得税で控除しきれなかった場合、残りの分のうち所得税の課税総所得金額などの7%(最高13.65万円)は住民税から控除されるという制度です。そして、この住宅ローン控除に関しては、消費税増税に際して控除の期間延長の措置がとられることになっています。消費税が10%になる2019年10月1日から2020年12月31日までに住宅を購入して入居すれば、控除期間が3年間延長され、合計で13年間所得税や住宅税の控除を受けることが可能です。
ただし、どんな住宅でも適用されるというわけではなく、利用するには以下の条件を満たしていなければなりません。
・自分が居住する住宅であること(セカンドハウスや賃貸物件ではないこと)
・床面積が50平方メートル以上であること
・中古住宅の場合は耐震性を備えた建物であること
・増改築をする場合は工事費が100万円以上であること
・借入期間が10年以上あること
・年間の合計所得金額が3,000万円以下であること

住宅ローン控除は住宅ローンを組めば自動的に控除されるわけではなく、確定申告が必要です。対象となる住宅に入居した年の確定申告をするときに住宅ローン控除に必要な書類を税務署に提出します。会社員など給与所得者も、住宅ローン控除を受けるためには最初の年には確定申告が必要です。なお、2年目以降は会社の年末調整時の手続きで住宅ローンの残高証明書を提出すれば住宅ローン控除を受けることができ、確定申告の必要はありません。

すまい給付金の増額

すまい給付金は住宅を購入すると給付金が支払われる制度です。住宅ローン控除の場合は、住宅ローンを組んで家を購入した人にしか適用されませんが、すまい給付金は住宅ローンを組んだ人も、組まずに一括で支払いをした人も給付を受けることが可能です。また、夫婦や親子など、一つの住宅に対して持分を決めて購入した場合、夫婦や親子それぞれに給付金が支給されます。すまい給付金は、所得に応じて給付される金額が変わります。消費税10%への引き上げ時には最大の給付額は50万円となり、収入が少ない方が、多くの給付金を受け取れるという点が特徴的です。

すまいる給付金を利用できる人
・対象となる住宅を所有していること(不動産登記上でも持分所有者であることが必要)
・対象となる住宅に住んでいること(住民票で実際に居住していることが確認できること)
・収入が一定以下(現行の消費税8%時は510万円以下、10%時は775万円以下)
・住宅ローンを利用しない場合は年齢が50歳以上

すまいる給付金の対象となる物件
・自分が居住する住宅であること
・床面積が50平方メートル以上
・新築住宅の場合は工事中の検査で品質が確認された物件
・中古住宅の場合は売買時などの検査で品質が確認された物件
・令和3年12月までに引き渡され入居が完了した住宅(消費税5%が適用されるものは除く)
給付を受けるためには対象となる住宅に居住を始めてから、すまい給付金申請窓口に必要書類をそろえて申請する必要があります。その際、一つの住宅で持分保有者が複数いれば、それぞれ申請しなければなりません。

次世代住宅ポイント制度

消費税増税の負担を軽減するため、新たに導入されることになったのが次世代住宅ポイント制度です。この制度では消費税が10%に増税されたあと、2020年3月31日までに契約した人が対象になります。なお、次世代住宅ポイント制度は新築住宅だけではなく、既存の住宅をリフォームする場合にも適用されるのが特徴的です。一戸あたりのポイント付与の上限は新築住宅で35万ポイント、リフォームで30万ポイントです。工事が完了したあとに必要書類をそろえて次世代住宅ポイント事務局に申請すると、さまざまな商品と交換することができます。
対象となる住宅は以下のとおりです。
・2019年4月1日から2020年3月31日までに請負契約・工事の着工をした注文住宅
(ただし、契約は2018年12月21日から2019年3月31日までの期間でも、着工が2019年10月1日から2020年3月31日なら適用)
・2018年12月21日から2020年3月31日までに請負契約・着工し、かつ売買契約を締結済みで、引渡しが2019年10月以降の分譲住宅
・2018年12月20日までに完成し、2018年12月21日から2019年12月20日までに売買契約締結済みで、引渡しが2019年10月以降の分譲住宅
新築住宅でポイント付与の対象になる条件
・エコ住宅
・長持ち住宅
・耐震住宅
・バリアフリー住宅

リフォームでポイント付与の対象になる条件
・窓・ドアの断熱工事
・外壁・屋根・天井・床の断熱工事
・エコ住宅設備の設置
・耐震工事
・バリアフリー工事
・家事の負担を軽減する設備設置
・若者や子育て世帯が既存住宅を購入する際に伴う一定規模以上のリフォーム工事など

贈与税非課税枠の拡大

若い世代が住宅の購入を考える際、親や祖父母などから住宅資金を援助してもらうこともあるでしょう。資金援助をしてもらった分については贈与になり、通常の暦年課税の場合は1年間で110万円を超えると贈与税が発生します。ただし、住宅を取得することを目的として資金援助してもらった場合、最大3,000万円までは非課税になりました。なお、この制度の適用を受けられるのは2021年12月31日までに契約した分までであり、確定申告を行う必要があります。
贈与税非課税枠が適用される条件
・自分が居住するための住宅であること
・資金援助を受ける者が20歳以上で、なおかつ贈与年の合計所得金額が2000万円以下であること
・贈与する者が父母や祖父母などのいわゆる直系尊属であること
・贈与年の翌年3月15日までに住宅を新築または取得、増改築をして入居すること
・床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であること

キャッシュレス消費者還元制度

政府は消費税が10%に引き上げられることで事前に駆け込み需要が増え、逆に増税後には反動で買い控えが増えることも当然予測していました。その対策として、キャッシュレス決済すると一部がポイント還元されるというキャッシュレス消費者還元制度の導入が決定しています。対象となる期間は消費税が10%に引き上げられる2019年10月1日から2020年6月30日までです。
すべての事業者でポイントが還元されるわけではありませんが、対象となるところで賢く買い物すれば、クレジットカードで通常付与されるポイント還元に上乗せされるなどメリットがあります。クレジットカードのみならず、電子マネーやQRコード決済も対象となりますので、新居に引っ越すときに新たに家具や家電を買いそろえたいと思う方は、キャッシュレス消費者還元制度を利用して、効率よくポイントを貯めましょう。

支援策をチェックしつつ購入計画を考えよう
消費税が8%から10%に引き上げられると、確かに消費税分の負担は増えます。しかし、消費税増税後には消費者の負担を減らすためのさまざまな支援策があるため、賢く利用すれば住宅購入にかかる費用を軽減することが可能です。そのため、「住宅購入は9月までにしなければ!」と焦らずに、利用できる支援策を念頭に置きながら購入時期をじっくりと検討しましょう。

執筆者プロフィール

杉浦 詔子
杉浦 詔子

杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント)
く人たち(会社員・公務員・派遣社員・契約社員・アルバイト、働く人の配偶者、育児介護休職者、退職者、等)の夢や目標をかたちにするため、ライフプラン(家計)とキャリアプラン(生活)を中心に、相談(カウンセリング・プランニング)と講義(セミナー)と執筆(ライティング)をおこなっています。


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