【専門家執筆】賃貸退去時のトラブルから学ぶ事前の予防策

2018年5月24日

賃貸物件に住んでいる人は、快適な日々を送っていても、いずれ誰もが部屋を退去するときがきます。退去するときには、部屋を借りたときの状態にしての貸し主に引き渡します。借り主として支払うことになる部屋の原状回復費用は、できるだけ低く抑えたいものです。退去時に高額の出費とならないように、あらかじめ原状回復費用とは何か、また低く抑えるために日ごろから心がけておくべき対策は何かを知っておくことが大切です。

退去時に発生する原状回復義務

民法上、部屋の借り主には原状回復義務があります。これは、借り主が部屋を明け渡すときには、借り主が設置したものを撤去し、元の状態に戻さなければならないとされています(民法598条、民法616条)。
例えば、借り主が設置した電化製品や家具を部屋から出して、貸し主に引き渡す必要があります。また、借り主が壁を破損してしまった場合は、借り主の費用にて壁を修繕しなければなりません。しかしながら、借り主は借りたときと全く同じ状態に戻さなければいけないということではありません。
平成23年に国土交通省より賃貸の原状回復のガイドラインが公開されていて、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされています。
引用:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン|国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html 

退去時のトラブル例

退去時にトラブルとなった事例をあらかじめ知っておくことで、事前に対策をすることができます。例えば借り主が壁を壊した場合でも、修繕費用として一般的な工事費用よりも、極めて高額な費用を貸し主が請求してきたときは、借り主は費用が高すぎると反論をすることができます。
また、原状回復費用には当てはまらない修繕について請求された場合も反論をすることができます。
原状回復費用として借り主が支払うべき項目は「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」とされているので、借り主と貸し主で費用を負担する項目が分けられます。
例えば、元々部屋に備え付けられていた設備を通常の使用をしていて数年後に設備が故障した場合は、設備の老朽化による故障とされ、貸し主が費用を負担することになります。
このような費用が借り主に請求された場合は、借り主は過剰な請求であると反論することができます。
その他のトラブル事例として、借り主の原状回復負担が国交省のガイドラインを超えて請求され、なおかつ入居時に支払っている敷金と相殺されてしまう場合です。借り主は、新たにお金を貸し主に支払うわけではないので見落としがちですが、本来返金されるべき金額が戻ってこないことは問題となります。そのため、借り主は敷金の返却額についても注意を払っておくことが有効です。

敷金が戻ってくるためには

次は、借り主側として原状回復費用の負担を減らし、敷金が戻ってくるための対策についてです。
先に記した国土交通省が定める原状回復のガイドラインでは、下記のように借り主が負担するべき事項が記載されています。
“床”の場合では、引っ越し時のひっかき傷や窓を開けていたことによる雨の吹込みによる腐食、
“壁、天井”の場合では、たばこのヤニ、ねじや釘の跡による劣化や落書き、
“柱など建具”の場合では、ペットによるひっかき傷、
“設備”の場合は、日常すべき手入れや清掃不良、カギの紛失
などです。
これらのことから、借り主は入居中に故意や過失にて、部屋を汚したり、傷つけたりしないことで、退去時に支払う費用を減らすことができます。
また、エアコンのフィルターや、お風呂場などの排水口も日ごろから定期的に清掃しておくことが有効です。
また、東京都都市整備局の下記のサイトでは、賃貸住宅トラブル防止ガイドラインが公開されています。
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-3-jyuutaku.htm
その他に、日本住宅性能検査協会では敷金診断士(http://shikikin.jp/)の資格認定をおこなっており、不動産賃貸における敷金・保証金を巡るトラブルの専門家である敷金診断士に相談をすることも有効です。

まとめ

借り主にとって、退去時の原状回復にかかる費用を少なくする為には、まず原状回復費用において借り主が支払う項目を“原状回復ガイドライン”などで確認しておくことが有効です。貸し主から過剰に費用を請求されるというトラブルもあり、その時には借り主として反論をすることができます。また負担を抑える対策として、借り主は故意や過失により部屋を傷つけないこと、または建具や設備などの日常清掃を継続して行っておくことで、原状回復費用を低減することが可能です。

 
【著者プロフィール】

大長伸吉様

大長伸吉(だいちょうのぶよし)
賃貸大家兼不動産経営コンサルタント、世田谷区・目黒区を中心に東京の土地購入から銀行融資、設計施工、満室管理、税務相続まで個別に寄り添っている。自身も4棟23室の物件を満室運営中。10年間で3,000回以上の個別相談と250回を超えるセミナーを開催、建築サポート実績:新築物件65棟302室、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者。著書:「クズ土地」アパート経営術/日本実業出版社、アパート経営で「マイ年金」づくり/カナリア書房、サラリーマン大家の教科書/Apple Application
ランガルハウス株式会社代表、年金大家の会主宰

 


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