【専門家執筆】平成29年の10月から施行された住宅セーフティネット制度で何が変わる?

2017年12月25日

【専門家執筆】平成29年の10月から施行された住宅セーフティネット制度で何が変わる?

本年4月に公布された住宅セーフティネット法改正法が10月25日に施行され、新たな住宅セーフティネット制度がスタートしました。
ここでは、この制度の概要やできた背景、また、この制度で何がどう変わったか、期待できる点やその展望をみてみたいと思います。

住宅セーフティネット制度の概要

住宅セーフティネット制度とは低所得者や障害者、高齢者などが自力で速やかに住宅を確保できるような社会的仕組みを指します。
所得や家族構成、身体的状況に関係なく住宅に困窮する世帯に対して、最低限の安全な暮らしを保障するため、だれでも住まいが確保できるという環境を整えようという考えに基づいた社会制度です。
具体的には、戦後復興時期にできた公営住宅制度の仕組みが基本となり、そうした公営住宅が災害時の際の緊急対応や低所得者への対応、民間が入居を敬遠する高齢者や障害者等への対応など、市場ではいわゆる社会的弱者に対しての住宅が十分に供給されないものの補完機能となっています。

住宅セーフティネット法ができた背景

住宅セーフティネット法ができた背景には、社会的弱者の増加にともない住宅セーフティネット機能を強化する意味合いで国が法の整備を行ってきたという背景があります。

いざ、社会的弱者である住宅確保要配慮者(低所得者、被災者、高齢者、その他住宅確保に特に配慮を要する者)が住宅を借りようとした場合、大家が入居に拒否感を持つケースがあります。
例えば、単身の高齢者や生活保護受給者、高齢者のみの世帯、ひとり親世帯などには、家賃滞納や孤独死、事故や騒音等のリスクがあるからということで入居を拒む大家がいます。
また、賃貸住宅を借りる際には保証人が必要とされていますが、保証人が見つからない場合には家賃債務保証会社による保証をしてもらうことになります。
この場合、やはり住宅確保要配慮者は先ほどのリスクがあるということで家賃債務保証会社から保証を断られるケースがあり、住宅確保要配慮者は簡単に住宅を確保できにくい環境になっています。
そこで、こうした住宅確保要配慮者に対して簡単に自力で住宅を確保する必要があり、その対策として2007年に「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」略称、住宅セーフティネット法なるものが制定されました。
住宅セーフティネット法は2006年に制定された住生活基本法に基づく住生活基本計画(2011年閣議決定)に沿って進められ、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給を促進することで国民生活の安定向上と社会福祉の増進に寄与することを目的としています。
この法律により公営住宅を住宅確保要配慮者へ優先的に供給して対応したり、国や地方自治体が民間事業者に協力要請をしたりして住宅確保要配慮者に居住支援をする内容です。

住宅セーフティネット法でなにが変わるか?

今回、住宅セーフティネット法改正法が施行されたことにより、一層の住宅確保要配慮者に対しての住宅を確保しやすくする方策となっています。
住宅セーフティネット法改正法に基づく新たな住宅セーフティネット制度は、主に住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅の登録制度、登録住宅の改修や入居者への経済的支援、住宅確保要配慮者の居住支援という3つから成り立っています。
要配慮者の入居を拒まない住宅を登録制度化することで要配慮者の住宅確保をしやすくするとか、国や地方公共団体が賃貸住宅の改修費の補助をするなどを推進するという内容です。
また、将来的は外国人等や大規模災害の被災者などもこうした制度の対象にする方向でいます。
例えば、中国残留邦人、海外からの引揚者、ホームレス、被生活保護者、失業者、新婚世帯、原爆被害者、犯罪被害者、DV被害者などが現在の基本方針で例示されています。

今後の期待と展望

今後、国や地方公共団体による住宅確保要配慮者に対する住宅供給をすることで、住宅確保要配慮者への対応と同時に民間の空き家や空き室を活用しての住宅確保ができるように推進していくと思われます。
住宅確保要配慮者用に空き家・空き室の対策として一環としてその活用が見込まれればいいでしょう。
家が余る時代の活用法として、こうした制度に役立てればウインウインであり理想的です。

まとめ

住宅セーフティネット法の改正法の施行により、高齢者、低額所得者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度など、民間の賃貸住宅や空き家を活用した新たな住宅セーフティネット制度が始まりました。
中でも、だれでも利用できるセーフティネット住宅情報提供システムの運用により、セーフティネット住宅の検索、住宅の所在、家賃などの閲覧が簡単にできるようになっています。
また、セーフティ住宅を提供できる事業者も住宅登録などがこのシステムでできるようになっており、より一層、住宅確保要配慮者にとっては住宅を探しやすい環境になりつつあります。
空き家・空き室対策の一環としても注目されていますので、よりよい運用ができることを期待したいですね。

【著者プロフィール】

寺岡 孝様

寺岡 孝(不動産コンサルタント)
大手ハウスメーカーに20数年勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。
住宅の建築や不動産購入などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。
生涯に一度とも言われる住宅建築や不動産購入において、「納得」や「安心」を実感できるようにしていただくためには、
「中立的な立場の専門家によるアドバイスが必要」と考え、関東近郊を中心に住宅建築や不動産購入など、住まいにまつわること全般のコンサルティングを行う。

 


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