和風住宅や、和の要素を取り入れた家で快適に!昔ながらの日本の住まいを見直し、今に活かす

日本の住まい(和風住宅)の特徴

2022年6月20日 更新
日本の住まい(和風住宅)の特徴

私たちが普段、当たり前のように暮らしている家は、日本の自然や気候に合わせた独自の特徴を備えていることをご存じでしょうか。ここでは昔ながらの庶民の家の代表として、国民的アニメ「サザエさん」の住宅の間取りを取り上げ、その特徴を見ていきましょう。

平面図

家族が集まる「茶の間」

ちゃぶ台を囲んで団らんや食事を楽しむ

家族が集まる「茶の間」 イメージ

サザエさんが暮らす磯野家の住宅は、昭和20年~30年代に多く建てられた平屋の木造住宅。磯野波平・舟・カツオ・ワカメ、フグ田家マスオ・サザエ・タラオの7人が住む二世帯住宅です。
家の中心となるのは、北側の「茶の間」です。現在では「リビング」という名称が一般的ですが、昔は一家の団らんや食事に使用する部屋をこう呼んでいました。茶の間から障子や襖を開けて、台所~波平と舟の部屋~客間~茶の間へとつながる「田の字」の間取りはこの当時の住宅によく見られたもので、家族が茶の間に集まりやすい動線設計になっています。

家に入るときは履物を脱ぐ

床の上で暮らす日本の住環境の知恵

家に入るときは履物を脱ぐ イメージ

玄関には土間と靴箱があり、家族や来客は履物を脱いでから家に入ります。日本の住宅では見慣れた光景ですが、実は入口で履物を脱ぐ習慣は世界的に珍しく、日本や韓国などアジアの一部地域でしか見られません(※)。
土間部分と床部分の境目には「上がり框(あがりがまち)」と呼ばれる段差があります。段差で家の外(=履物で過ごす場所)と内(=裸足で過ごす場所)を区別するのも、床の上に座ったり寝たりする日本ならではの特徴といえます。
※現在は、北欧諸国などでも靴を脱いで生活する習慣が見られます。

建具で空間を仕切る

プライバシー性は低いが、間取りの柔軟性は高い

建具で空間を仕切る イメージ

「建具(たてぐ)」とは、部屋と部屋の仕切りや、建物の外との仕切りのために開口部にもうけるドアや窓などのことをいいます。日本では古代から、板戸や襖、障子といったさまざまな建具が使われており、磯野家の間取りを見ても、玄関の引違い戸、部屋と部屋を仕切る襖や障子、縁側のガラス戸など多くの種類があることが分かります。
西洋の住宅は壁や廊下で部屋を独立させてプライバシーを確保しますが、昔ながらの日本の住宅は襖や障子などで空間を仕切るだけなので、家庭内でのプライバシー性は低くなってしまいます。その一方で、襖や障子を開け放って2部屋を大きな1部屋として利用するなど、間取りの柔軟性は高く、開き具合によって室内の通風を調整できるメリットもあります。

畳の上に座る、寝る

自然素材のイグサを使って居心地のよい空間づくり

畳の上に座る、寝る イメージ

現代の新築住宅はフローリングの洋室が主流で、和室を設けない間取りも見られますが、磯野家の住宅が建てられた昭和20年代は畳敷きの和室がスタンダードでした。
そもそも畳とは、稲わらを糸で刺し固めた畳床(心材)に、イグサで編んだ畳表(表面材)を縫い付けたもの。適度な柔らかさがあるので肌ざわりがよく、床の上に座ったり、ごろりと横になったりする日本の住宅には欠かせない建材の一つです。
また、イグサには調湿作用があり、湿気の多い梅雨時や夏には畳が空気中の水分を吸収して、逆に空気が乾燥しやすい冬には水分を放出してくれます。

ちょこっとメモ!ちょこっとメモ!

同じ一畳でも異なる畳のサイズ。家づくりをするときに確認を!

同じ一畳でも異なる畳のサイズ。家づくりをするときに確認を! イメージ

畳の長辺と短辺の比率は2:1が基本ですが、畳のサイズは地域や住宅の種類によって異なります。例えば、ひと口に「1畳」といっても、西日本の広い地域で使われる「京間」は191×95.5cm、関東地方で使われる「江戸間」は176×88㎝、中京地方で使われる「中京間」は182×91㎝、集合住宅で見られる「団地間」は170×85㎝となり、かなりの違いがあることが分かります。現在の一般的な注文住宅で採用されているのは中京間の182×91㎝ですが、住宅によって異なる場合もあるので、「想像していた6畳間よりも狭くて家具が入らない…」なんてことにならないよう、事前に住宅会社に確認しておきましょう。

床の間のある和室

和の空間にふさわしいたたずまい

床の間のある和室 イメージ

床の間は、座敷より一段高くした床(とこ)に花や置物を飾り、掛け軸をかけて来客をもてなすための場所です。客間につくられることが多いのですが、磯野家の場合、波平と舟の部屋に床の間があります。
その起源は、鎌倉時代、武士が自宅の壁に仏画や掛け軸などを飾ったスペースが発展したものと考えられています。室町時代になると、大名や武士の邸宅には床の間の隣に違い棚を設け、格子天井や畳を取り入れた「書院造(しょいんづくり)」と呼ばれる部屋をつくるようになりました。この書院造の様式が、現在の和室にも受け継がれています。

塀や門で敷地を囲む

外部との境を区切って防犯とプライバシーに配慮

塀や門で敷地を囲む イメージ

磯野家の外観は、正面に門があり、周囲をコンクリートブロック塀と板塀に囲まれています。敷地を囲む塀や門は外部からの侵入を防ぐほか、建物の出入りや屋外に干した洗濯物などを見られずに済むなど、プライバシーを確保する役割もあります。
西洋の住宅では、敷地を囲む塀をつくらず、丈の低い樹木や芝生などを配するオープンな外構が多くみられるため、日本の住宅とは対照的です。ただし日本でも、近年は塀や門を設けない外構が増えています。

南側は明るく開放感たっぷり

縁側に座ってのんびりひなたぼっこができる

南側は明るく開放感たっぷり イメージ

家の敷地まわりを塀や門でぐるりと囲んでプライバシーを確保しながら、南向きの窓を大きく設けてたっぷりの日差しを取り込み、庭や外の自然を一望するのも日本の住宅の特徴です。磯野家の間取りを見ると、南向きの縁側には開放的なガラス戸が設けられ、縁側に面した波平・舟の部屋と客間の障子を開けると庭との一体感が楽しめます。
昔から日本では、南向きの住宅が好まれます。これは高温多湿の日本の気候との関係が深く、日当たりや通風のよい南に面することで、カビや結露のリスクを少しでも減らすためです。

風呂の浴槽には肩まで浸かる

入浴スタイルの違いで浴槽にも違いがある

風呂の浴槽には肩まで浸かる イメージ

家風呂はもちろん温泉や銭湯など、独自の入浴文化が発達している日本。けれども庶民の家に風呂がつくられるようになったのは昭和30年代後半以降で、それまでは銭湯通いが一般的でした。
昭和20年代に建てられた磯野家ですが、アニメでは現代の一般的な家庭用風呂と同様に、シャワーと深い浴槽のある浴室が描かれています。入浴をするときは、まず浴槽の外のシャワーで下洗いをしてから、その後に浴槽に肩まで浸かるのが日本の入浴スタイル。一方で、ホテルなどで見かける洋式の浴槽は浅く、肩まで浸かることはできません。西洋では浴槽の外で下洗いをしたり浴槽に湯を溜めたりすることはほとんどなく、浴槽に立ってシャワーを浴びるスタイルが一般的です。

まとめると…まとめると…

日本人に寄り添って発展してきた家。暮らしの知恵と工夫が随所に

日本人に寄り添って発展してきた家。暮らしの知恵と工夫が随所に イメージ

戸建て住宅は間取りも仕様もさまざまですが、「サザエさん」の磯野家の住宅の例からもわかるように、私たちが慣れ親しんだ日本の住宅のイメージや生活習慣を反映していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。次のページでは、磯野家でも採用されている和風住宅の建築方法(木造軸組工法)について説明します。