【専門家執筆】高齢社会に向けて、40年ぶりに改正!相続分野の民法改正案とは

2018年8月17日

【専門家執筆】高齢社会に向けて、40年ぶりに改正!相続分野の民法改正案とは

民法で定められている、相続関連の規定が約40年ぶりに見直されることになりそうです。高齢化社会を視野に入れた「配偶者居住権」の新設など、残された配偶者の生活基盤の安定や相続トラブルの防止、相続手続きの簡素化につながる改正などが予定されています。それでは、改正案のポイントを見ていきましょう。

改正点:配偶者居住権の新設

配偶者居住権とは、相続発生後も今の家に配偶者がそのまま住み続ける権利のことです。居住権があれば、自宅の所有権がなくても、残された配偶者が住まいを確保できます。現状の制度でも配偶者が住み続けることができますが、所有権をすべて相続すると、他の財産が減ることもあります。一例を挙げて見てみましょう。

【前提】
◎相続財産:自宅2,000万円(評価額)、預貯金2,500万円、合計4,500万円
◎相続人:配偶者と子で、2分の1ずつ相続
◎遺産分割:自宅の所有権は配偶者がすべて相続、残り財産を配偶者と子で分ける

上記の前提で相続すると、現行の制度では次のような遺産分割になります。
・配偶者の相続分:自宅所有権2,000万円・預貯金250万円
・子の相続分:預貯金2,250万円

このように、配偶者が自宅に住み続けるために所有権2,000万円を相続すると、預貯金は250万円になります。一方で、子には預貯金2,250万円が渡るため、現金資産には大きな差があります。改正後は居住権を設定することで、次のように相続できるようになります。

・配偶者の相続分:自宅居住権1,000万円・預貯金1,250万円
・子の相続分:自宅所有権1,000万円・預貯金1,250万円

このように、自宅を居住権として相続することで自宅の評価額が下がり、その分、配偶者が相続する預貯金が1,000万円増えることになり、老後の生活資金を確保しながら自宅に住み続けることができるようになります。

ただし、居住権を得るには登記が必要なことや、子が所有権を第三者に売却した場合では配偶者が住めなくなる可能性があることは注意点です。

改正点:住居の遺産分割の対象からの除外

相続が起きたときには、遺言などで特別の指定がなければ、原則として法定相続分で遺産を分けます。とはいえ、仮に相続人の中に、被相続人(亡くなった人)から生前に高額な財産を贈与されている人がいると、法定相続分で分けると不公平になってしまいます。

このように、生前に財産を贈与され、受け取ることを「特別受益」といいますが、民法では、このような不公平な状態を正すための規定があります。遺産分割のときに、特別受益のあった相続人の取得する財産を減らすことで、相続人の間で遺産分割が公平になるようにするものです。

改正後は、婚姻期間が20年以上あれば、夫婦間で生前に自宅の贈与があったとしても、贈与された自宅は特別受益には含まずに、遺産分割ができるようになります。つまり、その分、配偶者には自宅以外の財産が増えることになり、その後の生活の安定に結びつきます。

その他の主な改正点

その他にも改正点がありますので、主なものを押さえておきましょう

【生前の介護などに金銭で報いる「特別寄与料」】
親の生前に、看病や介護などをしていた相続人には相続分が上乗せされる「寄与分」という制度があります。ただし、あくまでも法定相続人だけに認められる制度のため、亡くなった人の子の配偶者(義理の娘など)に貢献があったとしても、相続人ではないため寄与分はありません。

このような問題に対処するために設けられるのが「特別寄与料」という制度です。介護などで貢献した相続人以外の親族が、相続人に対して金銭を請求することで、相続財産の一部を受け取れるようにするものです。

【遺産分割の協議中でも故人の預金が引き出せる】
亡くなった人の預金は、原則として相続人による遺産分割協議が終わるまでは引き出すことができません。改正後は葬儀代や生活資金などは、仮払いとして引き出せるようになります。引き出すことのできる限度額は、相続人一人当たり「預貯金額の3分の1×法定相続分」までです。引き出すことのできる上限額は今後決まる予定です。

【自筆証書遺言の手続きが簡素化される】
遺言書の中で、自筆で書くものが「自筆証書遺言」です。簡単に作成できるなどのメリットがある反面、手書きで作成する負担や内容不備の心配もあります。改正後は、財産の一覧をまとめた「財産目録」はパソコンで作成できるようになるため、財産構成が変わったときでも、データの一部修正で済みます。
作成後は自宅などに保管することの多い自筆証書遺言ですが、これからは遺言の内容を事前にチェックを受けた上で、法務局で保管できるようになります。また、法務局に預けることで、自筆証書遺言で必要だった「検認」手続きが不要になります。検認とは、相続人全員が立ち会い、家庭裁判所で遺言書の開封や内容の確認する手続きです。手続きの手間や時間が大きく省かれることになります。

まとめ

ここまで見てきたとおり、今回の改正は残された配偶者の保護、相続手続きの簡素化など、相続の実情に合った内容です。改正民法は今後、順次施行されることになっています。相続はいつ起こるか分かりません。制度改正の内容を理解し、関心を持って、相続でもめることのないよう備えておきましょう。

執筆者プロフィール

高橋
高橋 浩史
高橋 浩史(ファイナンシャルプランナー)
FPライフレックス代表。住宅や保険など高額な買い物時に「お金のことを知らないと損をする!」ことを痛感し、書籍編集者として出版社勤務のかたわら、ファイナンシャルプランナー(FP)資格を取得。2011年からFP業務を開始し、「専門用語やカタカナ言葉を使わない、日常の言葉で語れるファイナンシャルプランナー」として、相談時の話しの分かりやすさには定評がある。子育て世代を中心に、年間100組以上の方のコンサルティングを行っている。
http://www.fpliflex.com/

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