【専門家執筆】2018年から施行されるインスペクションの義務化における注意点とは

2018年2月27日

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古い空き家問題は年々顕在化していますが、空き家も含めた中古住宅の流通は未だに浸透しにくい状況です。
確かに、昔より中古住宅の購入者は増加していますが、飛躍的に伸びているわけではありません。
国としては、空き家問題の解決も含め、中古住宅のマイナスイメージである「古い、汚い」を払拭し、中古住宅の取引拡大と流通促進につなげたいところです。
その1つの施策として、今回、インスペクションの普及を目的とした宅地建物取引業法(宅建業法)改正があり、不動産取引の際にインスペクションの意向確認の義務化をさせて中古住宅の流通活性化につなげたいという目的があります。

不動産取引の際にインスペクションの意向確認の義務化とは?

宅地建物取引業法の改正により、媒介契約、重要事項説明、売買契約の3段階において、宅建業者はインスペクションに関する確認事項があります。順を追ってみていきましょう。
・媒介契約時
媒介契約を締結する際にインスペクション事業者の斡旋が可能か否かを示し、可能な場合は希望により斡旋する。
・重要事項説明時
該当する住宅でインスペクションが実施済みか否かを示し、実施済みの場合には結果を示す。
・売買契約時
インスペクションの結果に基づいて該当する住宅の現況を売主・買主双方に確認してもらい、その内容を記載した書面を交付する。

以上のような内容で実施されるようになりました。
それぞれの契約の際に、インスペクションを行うか否か等々の説明や書面交付が義務付けられます。

インスペクションとは何か? また、その説明は?

インスペクションとは住宅診断や建物検査とも言われ、住宅の設計や施工をよく理解している建築士やホームインスペクターと呼ばれる人などの専門家が住宅の現況調査を行い、不具合の有無、補修箇所の指摘等を客観的に検査することとされています。
今回、法改正に当たり、国交省からは「既存住宅インスペクション・ガイドライン」というものが策定されました。
これは基礎的なインスペクションとして、目視確認や建物の傾き・ヒビ割れ等を測る計測器を用いた現況調査を対象としています。

検査は、対象箇所ごとに次のような劣化状況の有無を確認することを基本とします。
①構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの
②雨漏り・水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの
③設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの
これらの項目でも目視が前提ですので、家具などで隠れて見えないという場合には目視不可の報告をします。
また、インスペクションの中立性も必要であり、その確保のために次のような点がガイドラインに盛り込まれています。

・自らが売主となる住宅についてはインスペクション業務を実施しないこと
・インスペクション業務を受託しようとする住宅において、媒介業務やリフォーム工事を受託している又は受託しようとしている場合は、依頼主に対してその旨を明らかにすること
・住宅の流通、リフォーム等に関わる事業者から、インスペクション業務の実施に関し、謝礼等の金銭的利益の提供や中立性を損なうおそれのある便宜的供与を受けないこと
(引用:国土交通省 既存住宅インスペクション・ガイドラインhttp://www.mlit.go.jp/common/001001034.pdf )

以上の内容がガイドラインに加えられています。
但し、検査機械等を使ったより専門的な詳しいインスペクション(耐震診断も含みます)は、二次的なインスペクションとして今回のガイドラインの対象から外れています。
つまり、あくまで目視の範囲での住宅検査ということを理解しておきましょう。

今後の不動産取引で特に買主が注意する点は?

基本的にはインスペクションの実施そのものが義務化されるわけではありません。
あくまでも売主、買主の希望でインスペクションを行うか否かを決めるという内容です。
また、買主予定の者がインスペクションを依頼する場合、物件所有者の承諾を取り、インスペクションに必要なその住宅に関する資料を入手して、インスペクションの業務者に提供する必要があります。
加えて、インスペクション業務を委託する場合には、書面により業務内容や検査人、中立性に関する情報等を確認し、検査終了後には検査状況を記した報告書を受け取ります。

なお、こうしたインスペクションには、あくまでも該当住宅の現況を示すだけで、瑕疵の有無や、瑕疵がないことを保証するものではないこと、建築基準法に適合しているか否かを判定するものではないこと、検査時点以降変化がないことを保証するものではないことは把握しておきましょう。
そのため、インスペクションをしたからといってすべて安心というわけではありません。

今回のようなインスペクションだけでは心もとない場合、例えば、既存住宅売買かし保険の制度を利用するのも良いでしょう。
既存住宅売買かし保険は、中古住宅の検査(インスぺクション)と保証がセットになった保険制度で、専門の建築士による検査に合格することを必須としており、住宅専門の住宅瑕疵担保責任保険法人が保険を引き受けるという制度です。
万一、売買された中古住宅に欠陥が見つかった場合でも、補修費用等の保険金が事業者(事業者が倒産等の場合は買主)に支払われます。
何らかの不安要素が該当する中古住宅にあった場合には、こうした制度を利用することも視野にいれておきましょう。

まとめ

国としては中古住宅の流通に関して、インスペクションを普及させることで中古住宅の取引拡大と流通促進につなげたいという意図があります。
中古住宅を購入したいと思っていても、その住宅に大きな欠陥や瑕疵があるかどうかの有無は買い手の消費者にはわかり難いものがあります。
したがって、不動産取引の際にインスペクションという建物検査を行うかの意向確認の義務化や、既存住宅売買かし保険制度の利用で、今後の中古住宅のより一層の流通活性化につなげたいところです。

【著者プロフィール】

寺岡 孝様

寺岡 孝(不動産コンサルタント)
大手ハウスメーカーに20数年勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。
住宅の建築や不動産購入などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。
生涯に一度とも言われる住宅建築や不動産購入において、「納得」や「安心」を実感できるようにしていただくためには、
「中立的な立場の専門家によるアドバイスが必要」と考え、関東近郊を中心に住宅建築や不動産購入など、住まいにまつわること全般のコンサルティングを行う。

 


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