【専門家執筆】生産緑地法の2022年問題とは、今後の影響を解説

2017年8月3日

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2022年は、生産緑地指定が解除される年です。
現在、生産緑地指定されている土地面積は、約1万3000ヘクタール以上です。
『これだけの生産緑地が一斉に指定解除されると多くの宅地が不動産市場に流れ込み住宅地の価格相場を崩すのでは?』と懸念されています。
生産緑地法の指定解除が及ぼす消費者への影響について解説します。

生産緑地制度とは

そもそも『生産緑地法』とは、オイルショック翌年の1974年に市街化区域内の宅地化を促進する目的で施行されました。
この法律により、大都市圏の市街化区域内にある農地は、宅地並み課税となり、多くの農地が宅地として住宅となりました。
その後、1992年に生産緑地法の改正が行われ、今まで宅地並み課税されていた市街化区域内の農地が一定の要件(土地面積500㎡以上、建築行為の制限、農地としての管理義務)を満たすことにより生産緑地の指定を受けられ、固定資産税が農地並みの税率に軽減され、相続税の納税猶予が受けられるようになりました。

生産緑地法の2022年問題とは

生産緑地指定は、1992年の告示日から30年間の期間限定です。
この期間満了の2022年を迎えると、土地の所有者は、市区町村に土地の買取りの申し出を行なえますが、自治体による買取りは義務ではありません。
従って、どこの自治体も財政難を理由に買取りすることはないと言われています。
生産緑地指定が解除されると、固定資産税の農地並み課税が終わり、税率が高い宅地並み課税に戻ると同時に相続税の納税猶予もなくなります。
それにともない税金を支払うことができない多くの地主が不動産市場に所有地を売りに出すと言われています。
現在、約1万3000ヘクタール以上の広大な市街化区域内の農地が生産緑地指定されています。
敷地40坪の区画で換算すると、約100万区画も分譲できる広大な土地です。
その多くが、三大都市圏に集中しています。
言い方を変えると『三大都市圏に約100万棟分の新築を建てられる宅地在庫が眠っている』と表現できます。
大手パワービルダーは、グループ全体で年間約2万棟もの新築分譲住宅を大量供給しています。
約100万区画となると、大手パワービルダーでも50年分の土地在庫量です。
これにより不動産市場は活性化しますが、住宅の供給過多によって、空き家が大幅に増加する可能性や住宅価格の値下がりが懸念されています。
これを『2022年問題』と呼ばれています。
しかし、このような市場の急激な変化は、不動産市場を崩壊させ日本経済にも悪影響をおよぼしかねません。
そこで、平成29年度の通常国会で「都市緑地法等の一部を改正する法律案」を閣議決定されました。
この法改正で、生産緑地法、都市計画法及び建築基準法関係にともない『生産緑地の買取り申出が可能となる始期の延期(30年経過後は10年ごとに延長可)』となりました。
簡単に言うと『2022年になっても生産緑地指定を10年ごとの延長できるようになります』という法改正です。
この法改正によって、生産緑地指定解除にともなう不動産市場への急激な宅地の流入にブレーキがかけられることになりました。

一般消費者への影響とは?

今回の法改正で生産緑地指定解除による急激な不動産市場の変化は抑えられますが、2022年といえば、東京オリンピック需要に伴う好景気も既に終わっています。
現在、東京オリンピックに向けて、開催会場や外国人観光客を受け入れるための宿泊施設の整備、道路などのインフラ整備の経済効果で景気が順調と言われています。
しかし、東京オリンピックの後は、都心部のマンションも含めて不動産の価格が下落する可能性があるとも囁かれています。
今回の法改正で生産緑地指定が10年ごとに延長できるようになりますが、中には延長を望まない地主もいます。
そのような地主は、生産緑地指定解除をきっかけに土地売却やアパート建築します。
少しずつ住宅供給量が増えて住宅相場は値下りする可能性はあります。
しかし、今回の法改正で2022年の生産緑地解除後に土地を売却する地主の数は最小限に留まることでしょう。
従って、消費者としては、2022年問題による不動産市場の値下がりについて過度な期待を抱かない方が無難と言える状況となりました。

まとめ

不動産市場を取り巻く環境は、生産緑地だけではありません。
人口減少、空き家問題、東京オリンピック後の景気の懸念など課題は山積です。
現時点で一つ断言できることは『今のところ不動産価格が値上がりする要素は見当たらない』ということです。
今後も消費者にとっては『購入しやすい価格で住まいの選択肢が多様な時代が続く』と言えるでしょう。

【著者プロフィール】

田中 勲様

田中 勲(不動産業) 
不動産会社勤務を経て2009年、レジデンシャル不動産法人株式会社を設立。テレビやラジオなどのマスメディアで不動産の専門家として数多く取り上げられ、幻冬舎出版より、著書「こんな建売住宅は買うな」を出版。
保有資格:宅地建物取引士、宅地建物取引業
・NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会認定:住宅診断士
・NPO法人 日本耐震防災事業団認定:木造住宅耐震診断士
・一般社団法人 街と暮らし環境再生機構認定:赤外線建物診断アドバイザー
・一般財団法人 日本電磁波協会認定:電磁波診断士
・一般社団法人 金融財政事情研究会:ファイナンシャルプランナー
・一般財団法人 住宅金融普及協会認定:住宅ローンアドバイザー

 


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