【専門家執筆】熊本地震によって建築基準法はこれからどう変わる?

2017年5月24日

熊本地震によって建築基準法はこれからどう変わる?

2016年4月14日に発生した熊本地震は、震度7が二回発生するという専門家も予想しなかった地震でした。建築基準法では複数回の地震を想定していません。また同法は人命を守る事を目的とし、建物の健全性を保全する事は問われていません。この事により今後建築基準法はどの様に改正され、強化されていくのでしょうか。

耐震基準改正の遍歴から学ぶ!旧耐震基準と新耐震基準の違いとは

昭和53年に発生した宮城県沖地震の教訓を元に、昭和56年建築基準法の大改正があり、耐震基準も大幅に強化されました。それまでの耐震基準に比べ、鉄筋コンクリート造を例に挙げると、柱の太さが約1.3倍の大きさになり、鉄筋の量も1.2倍程度に増量されています。
木造在来工法に関しても改正があり筋交いや構造用合板で構成された耐力壁の量が1.4倍程度増量されております。ただ木造に関しては耐力壁の増量はあったものの、それ以外の改定はありませんでした。平成7年に阪神大震災が発生し木造家屋の倒壊が多くみられました。
その際に木造家屋の倒壊のメカニズムが研究され、柱が土台から抜け落ちて倒壊に至る事が判明しました。そこで平成12年に木造在来工法に関する法改正があり、ホールダウン金物の設置や筋交いプレートの義務化が加わりました。ホールダウン金物の導入により柱は基礎と直接緊結される様になった為、それ以前の建物に比べ飛躍的に耐震強度は増し、阪神大震災クラスの地震にも耐えうると思われていました。

熊本地震による建築基準法の影響

平成12年に住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が施行され、建築基準法以外で耐震性能を向上させようと云う試みが始まりました。耐震等級を三段階に分け、耐震等級1=建築基準法程度の耐力・耐震等級2=建築基準法の1.25倍の耐力・耐震等級3=建築基準法の1.5倍の耐力と定められました。
また、耐力壁の量に留まらず、建築基準法には規定のない、水平構面の剛性検討や耐力壁線間距離の検討といった、より高度な耐震設計を求められる様になりました。これは人命を守るための最低限の基準とする建築基準法に比べ、品確法は建物の健全性も視野に入れた法律だといえます。
平成21年に施行された長期優良住宅の普及の促進に関する法律にも品確法で規定された耐震等級が導入され、耐震等級の高等級を目指すことが地震対策の近道とされました。しかし、熊本地震により二日連続で震度7の揺れに襲われたため、耐震等級2の家が倒壊する事態が発生しました。このことは直ちに耐震等級2の家が危険だというものではありませんが、地盤の軟弱さ・建物形状の歪さ・重芯と剛芯の不一致・壁面の直下率の低さ・地震波と建物の固有震動周期の一致といった悪条件が重なれば、倒壊に至る可能性を示したものだといえます。
現在のところ、耐震等級3での被害は確認されておりませんが、予期しえぬ地震や外的条件が重なれば、同じ検討項目でしか耐震性を検討していない耐震等級3の家も安心だとは言えなくなっています。

まとめ

大災害が発生する毎に、法律が強化されるのは世の常で、おそらく数年後にはさらなる強化策が打ち出されるかと思います。
具体的な内容は今後の研究成果を待つしかないのですが、現行の建築基準法上の耐力壁の増量といった方法では間取りの制約が大きくなりすぎて現実的では無い様に思われます。
とりあえずは、長年の懸案とされていた木造住宅における特例措置(簡易な壁量計算のみで合法とする措置)の廃止が検討されるでしょう。木造も、その他の構造と同様に応力度計算を行える道筋が既に完成しています。応力度計算により詳細な力の伝達ルートを把握すれば、どこにどの様な部材を投入すれば良いか、経験に頼らず配置する事が出来る様になります。
また、今後は現行建築基準法に依存しない新たな地震対策が導入されるのではと考えています。例えば、既に市販されている制振装置は、建築基準法による規定は一切ありませんが、建物の層間変形を抑えるのには有効で筋交いの破断や構造用合板の釘抜けなどを防止するのに効果があります。
制震装置の法的な位置づけと義務化が焦点になるのではと考えています。告示で仕様が規定されている免震構造は、地震力を建物に伝達させない構造になっていますので、地震時には大きな効果が期待できます。但し、現状では申請が煩雑で木造住宅一件建てるにも適合性判定を受けなければなりません。これらの法的な手続きの簡略化も期待されるところです。まだまだ高価な免震装置ですが、被害を受けてから必要となる復旧費と比較すれば、割安な価格かと思いますので、地震時に家族に寄り添えない職業の方は検討に値するのではと思います。
今後も新たな地震対策関連商品や工法が考案されるかと思います。法律で定められた事を行うのは最低条件として、現状では法律の定めの無い地震対策にも視野を広げる事がこれからの地震対策ではないかと考えます。

【著者プロフィール】

福味 健治様

福味 健治(フクミ ケンジ)(一級建築士)
大学の建築科を卒業後、大阪の住宅会社に入社。その後独立し、岡田一級建築士事務所を開設。IAU型免震工法を利用した施主の要望に沿った住宅提案、また、資格を活かし免震住宅等の相談も承っている。
保有資格:一級建築士、住宅性能表示評価員、木造住宅耐震診断士、被災建築物応急危険度判定士、IAU免震住宅設計資格者、木造耐火建築物講習受講者、設計専攻建築士

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