2世帯住宅の共有スペースと分離スペースについて

2世帯住宅のカタチいろいろ

家づくりや家えらびと言うと、真っ先に間取りや設備に目が行きがちですが、2世帯住宅の場合は初めにそれぞれの世帯の生活スタイルを振り返り、住まいの共有スペースと分離スペースについて考えてみる必要があります。

2013年5月9日 更新

「共有スペース」と「分離スペース」という考え方

2世帯住宅を検討中のあなたは、住まいの「どこまで」のスペースを親世帯または子世帯と共有したいですか?住まいの敷地には庭があり、玄関があり、家族が集まるリビングやダイニングがあります。キッチン、浴室、洗面所、トイレといった水まわりや、プライベートな空間である個室(寝室)があり、これらの部屋は廊下によって結ばれています。これらのスペースをどこまで共有し、どこから別々に分離するか──それを考えることが、2世帯住宅の家づくりの第1歩です。

分離スペースと共有スペース

2世帯が同じ場所を利用する「共有スペース」に対し、「分離スペース」はそれぞれの世帯で利用するスペースです。例えば、一方の世帯に来客が頻繁にあるようなら、玄関は1つを共有するのではなく、分離して世帯別に設けた方が良いかも知れません。また、子世帯が共働きであまり料理をしないのなら、メインとなる共有キッチンを親世帯側につくり、皆で食事をワイワイと楽しむのも良いでしょう。言い換えると、親世帯と子世帯の共有スペース、分離スペースを検討することは、それぞれの生活スタイルにもとづいて無理のない住まいのイメージを明確にすることでもあるのです。

共有スペースにするかどうか検討しておきたいスペースは以下の通りです。

玄関

玄関
家の顔とも言える玄関。1つの玄関を共有すると一軒家としてのまとまりが生まれ、玄関を2つにすると独立度が高くなります。

希望別オススメタイプ

  • 共有したいA.共有タイプorC.部分共有タイプ
  • 別々にしたいB.独立タイプ

リビング

リビング
リビングを共有すると親世帯と子世帯が顔を合わせる時間が増えます。ただ、どちらか一方の世帯の来客が多い場合、共有のリビングだとわずらわしいことがあるかも知れません。

希望別オススメタイプ

  • 共有したいA.共有タイプorC.部分共有タイプ
  • 別々にしたいB.独立タイプorC.部分共有タイプ

ダイニング・キッチン

ダイニング・キッチン
基本的に親世帯と子世帯が一緒に夕食をとるなら、一方にメインのダイニングとキッチンをつくり、もう一方にサブキッチンを設けるケースが多いようです。

希望別オススメタイプ

  • 共有したいA.共有タイプorC.部分共有タイプ
  • 別々にしたいB.独立タイプorC.部分共有タイプ

浴室

浴室
親世帯と子世帯の入浴時間が重なる場合は、それぞれの世帯に浴室を設ける方が無難。入浴時間が重ならないのであれば共有で構いませんが、シャワー室があると便利です。

希望別オススメタイプ

  • 共有したいA.共有タイプorC.部分共有タイプ
  • 別々にしたいB.独立タイプorC.部分共有タイプ

洗面所

洗面所
洗面所を1つにすると、混雑する朝は大変ですが譲り合いの心も生まれるはず。過度の混雑が避けられない場合は洗面所を別々にしましょう。同様に、洗濯機も共有するかどうかを検討します。

希望別オススメタイプ

  • 共有したいA.共有タイプorC.部分共有タイプ
  • 別々にしたいB.独立タイプorC.部分共有タイプ

生活スタイルから考える2世帯住宅のカタチ

上のスペースについて「共有したい」と答えた項目が多ければ、【A.共有タイプ】、「別々にしたい」と答えた項目が多い人は【B.独立タイプ】が向いていると言えます。また、「共有したい」「別々にしたい」という回答がどちらもある場合は、住まいの一部分を共有する【C.部分共有タイプ】を選ぶと良いでしょう。

A.共有タイプ

家族みんながワイワイ過ごす昔ながらの「同居」に近いパターン

親世帯と子世帯で玄関やリビング、ダイニング、水まわりといった生活空間のほぼ全域を共有するパターンです。この共用タイプの住まいは、プライバシー空間と言えば個々の個室(寝室)のみ。昔ながらの「同居」のイメージに近いですが、家族の生活に合わせてメインの共有設備とは別にサブキッチンやシャワー室などを設けます。

● メリット
生活空間を共有するため、2世帯間のコミュニケーションが密になる。
家事や育児の協力が得られやすい。
建築費の他に、水道光熱費が一括のため経済的にムダがない。
● デメリット
ほとんどのスペースが共有なのでプライバシーは守られにくい。
生活パターンによっては、浴室や洗面所などの順番待ちなどが発生することも。

B.独立タイプ

2世帯の生活空間が左右または上下で独立するパターン

屋根は1つでも、玄関やリビング、ダイニング、水まわりなどのすべての生活空間を別々にしつらえるパターンがこの「独立タイプ」。住まいが独立しているため、権利や登記を分けることが可能で、親世帯と子世帯のつながりは「お隣さん」感覚になります。「親子の距離感は近い方が良いけれど、プライバシーも大切にしたい」という場合に向いているようです。

● メリット
2世帯住宅とは言え、生活空間が別々でプライバシーが守られる。
2戸の住宅として区分登記が可能なので固定資産税の控除が2戸分受けられる。
(家の形態などに条件があるため詳細は各市町村に要相談)
● デメリット
実質的に家を2軒建てるのと変わらないため、建築費や水道光熱費がかかる。

独立タイプの場合、さらに4つに分けられます。

「連棟完全独立タイプ」

壁を隔てて、左右に2つの住まいがあるタイプです。お互いの行き来は玄関からになります。住まいの独立性は最も高く、将来、どちらか一方の住まいを賃貸に出すことも可能です。

「連棟独立タイプ」

左右に2つの住まいがある点では「連棟完全独立タイプ」と同じですが、お互いが内部で行き来できる扉を設けています。扉に鍵をかけてしまえば、「連棟完全独立タイプ」並みの独立性の高さが期待できます。

「上下独立・外階段タイプ」

1階と2階に分かれて2つの住まいがあり、外階段を設けます。お互いの行き来は、外階段を通って玄関を利用します。住まいの独立度は高いですが、生活スタイルによっては1階世帯への防音・遮音を考える必要があるでしょう。また、外階段の他にお互いが内部で行き来できる内階段を設ける場合もあります。

「上下独立・内階段タイプ」

「上下独立・外階段タイプ」と同様に1階と2階に分かれて2つの住まいがありますが、こちらは1階に2つの玄関があり、一方の玄関は1階世帯へつながり、一方の玄関は内階段から2階世帯へつながっています。生活パターンによっては1階世帯への防音・遮音を考える必要があるでしょう。

C.部分共有タイプ

独立タイプと共有タイプの良いとこ取りのパターン

住まいの中の一部を共有し、それ以外は別々に設けるパターンです。例えば、玄関のみ共有する、リビングは共有するけれどダイニングキッチンは別々にするなど、親世帯と子世帯の生活パターンや考え方などによって、共有スペースと分離スペースを振り分けていきます。

部分共有タイプは、「独立タイプのように完全に住まいを分けてしまうのは不安」という家族の気持ちに応えるものです。共有タイプのような親密さがありながら、独立型のようなプライバシーにも配慮した「良いとこ取り」と言えるでしょう。

● メリット
適度な距離感で、お互いの親密さとプライバシーを保てる。
それぞれの生活パターンや考え方に沿って共有スペースと分離スペースを分けられる。
共有スペースがある分、独立タイプよりも建設費や水道光熱費が安くなる。
● デメリット
場合によっては、お互いに距離を感じたりプライバシーが気になったりするなど、どっちつかずになる可能性も。

これらの住まいの形は、2世帯住宅の登記、融資、税金などお金にまつわる面で大きく変わってきます。

2世帯住宅から2.5世帯住宅へ!

親世帯+子世帯

2.5世帯とは、従来の2世帯(親世帯と子世帯)に加えて、0.5世帯(子世帯のきょうだい)をプラスした世帯です。0.5世帯に当たる子世帯のきょうだい(親世帯からすると子どもでもあります)は、成人しており、なおかつ独身であるイメージとされています。

現代は晩婚化が進んでいる上、一生独身で過ごす人も少なくありません。そのようなきょうだいが0.5世帯として親世帯、子世帯と生活を共にする住まい方が、この2.5世帯住宅なのです。2.5世帯の特徴として、親世代、子世代の暮らしやすさはもちろんのこと、独身ライフを満喫するきょうだいに配慮した間取りになっていることが挙げられます。

きょうだいが仕事などで遅い帰宅になっても、他の世帯に気兼ねしなくても済むように、玄関からダイレクトに個室(寝室)に直結。ワンルームマンションのような独立性を備えながらも、週末は家族みんなで食事が楽しめるように、共用の広いダイニングを備えているなど、0.5世帯の生活スタイルに沿った住まいです。

次のページでは「2世帯住宅のお金の話」を紹介します。